[1] 事業を相続させるための法的手続き
  [2] 相続における遺留分減殺請求権
  [3] 新借地法と旧法時代の借地契約の更新
  [4] ゴルフ預託金返還時期の一方的延長に会員は対抗できるか?
  [5] 競業関係にある会社従業員の雇用
◆◆◆事業を相続させるための法的手続き◆◆◆

私(A)は長男、二男、長女の子供があり、会社を経営しています。最近、専務取締役である長男が急死しました。亡き長男には嫁と20歳になる息子がいますが、嫁と私は折り合いが悪く、孫もまだ未熟なので、会社の後継者を常務取締役である二男に変更しようと思いますがどのような方法があるでしょうか。

 なお、会社の敷地は私の個人所有であり、その上に会社所有の五階建ビルが建っています。長男と長女にはそれぞれ自分名義の家を建ててやりましたが、親孝行な二男は私と同居しており個人財産はありません。

 
「会社を継承させるための条件」:同族会社の事業を円滑に継承させるには、後継者に会社の支配権を与えなければなりません。従って本件の場合には、なるべく早い時期に社長を二男に譲って実務を掌握させると共に、その力の裏付けとなる保有株式が、少なくとも過半数に達するよう配慮すべきですが、本件のように個人資産が事業継続の重要な要件になっている場合には、このほか個人財産(会社敷地)も二男が確実に取得できるようにしなければなりません。
 自社株の名義移転は、譲渡と贈与を上手に組み合わせても少なくとも10年くらいの長期的処置が必要ですし、譲受人に経済的負担が過重になりがちです。
そこで生前処分が十分でない場合に備えて相続対策が必要となります。

「遺留分の事前放棄」:Aさんが自社株の過半数と会社敷地と自宅を二男に遺贈すると遺言した場合、二男の相続財産は全体の9割にもなりますので、長男の遺族から遺留分(法定相続分の2分の1)を侵害したとして訴えられる可能性があります。このような将来の紛争を防ぐ方法として遺留分の事前放棄があります。

将来相続が始まった際相続人となる者(推定相続人)は、家庭裁判所の許可を得て相続開始前に遺留分を放棄することができます。(民法第1043条)これは相続人(長男の代襲相続人および長女)の自由なる意思表示を要しますから、Aさんが強制したりすることは出来ません。家庭裁判所の許可を要するとしたのは遺留分の放棄をする人間の意思を確認するためです。

本件の場合、長女は直ちにAさんの説得に応じて遺留分の事前放棄に同意しましたが、長男の代襲相続人である孫と、後見役をつとめる嫁の説得は難航しました。そこでAさんは後継社長の二男ともども孫の会社での将来について十分話し合うと共に、亡き長男に対して会社から破格の退職金および弔慰金を支払って、嫁や孫の相続税負担を一掃する等の経済的配慮を交換条件として遺留分の事前放棄の手続きを取ることが出来ました。このような説得は諸々の条件を十分に検討したうえで慎重な対応が必要です。専門家に相談されたうえで、説得する相手の信頼を損なわないよう手続きを進めることをお勧めします。
 
   
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