◎連載第1回 . . . . .(社)日本音楽事業者協会会報「UFUFU」掲載ページより
いまどき「肖像権が無い」だって!
 確かに日本には未だ「肖像権」と呼ばれる法律は存在しません。 しかし、法律がないからといって、肖像権なる権利が法的に無効かというと、そんな事はありません。この権利は多くの判例により法的に確立していて、肖像権という言葉自体も、裁判で法的権利を有する用語として用いられています。そのような事実にもかかわらず、未だに一部の雑誌編集者や出版社の顧問弁護士が「日本には肖像権が無い」などと言っていると聞き及んでいます。誠に遺憾というか、実に嘆かわしい話ですね。
 
[悪質編集者たちは故意に「肖像権」を無視している]
 「日本は肖像権が無い」のではなく、日本には肖像権を明文化した法律がまだ無いだけです。そして、肖像権という法律の条文は無くても、肖像権という法的な権利自体は、明確に存在するのです。
では、常時タレントの写真を扱い、本来は誰よりも肖像権を意識しなくてはならない雑誌の編集者や雑誌社の顧問弁護士が、なぜ、しばしば「日本には肖像権が無い」 などと平気で口走るのでしょうか?

 彼らも、本当は日本に肖像権という法的権利が存在するのを知っていると思われます。
そうでなければ、自分たちの雑誌に載せる一般人の写真にわざわざ“目隠し”をする理由が見つかりません。「日本に肖像権は存在しない」と本気で信じているならば、目隠し無しで誰の写真でも堂々と掲載できるはずです。

 では、悪質雑誌等の編集者たちは、タレントの誹謗中傷記事にタレントの写真と一般 人の写真を添える際に、なぜ一般人の写真だけを目隠しするのでしょうか?この点を吟味すると、彼らの思惑の幾つかが見えてきます。
言うまでもなく、目隠しする理由は目隠しをしない写真を載せ、万一その人から人権侵 害や肖像権侵害で訴えられると、裁判で負ける可能性が高いと考えているからでしょうね。つまり、彼らは、写真の無断掲載が肖像権侵害や人権侵害につながる可能性を知 っているのです。ですから「日本に肖像権が無い」と言いながら肖像権使用による人権侵害を警戒する人の論理構造は、自家撞着以外の何物でもないことになります。

 悪質編集者にとって、実は肖像権が存在するか否かは問題ではないのです。目隠し写 真に示されるように、一方で肖像権の存在を認めながら、タレントやアーティストに対しては、故意にそれを認めたがらないのです。いまどき「日本に肖像権が有るか無いか」 などという議論は、完全に無視して結構です。
 
[分かり切ったことだが、タレントにも「人権」や「肖像権」がある]
 では悪質な編集者がタレントの写真掲載には許諾がいらず“目隠し”無しでよいと考 える理由は何でしょう?

 一つの理由は、彼らが「タレントやアーティストや有名人にはプライバシー権としての肖像権や人権がない」という、誠に手前勝手な理屈を信奉しているからだと思われます。
 改めて言うまでもなく、一般人、タレントにかかわらず、人間である以上、誰にだって「人権」や「肖像権」があります。タレントの写真を、タレントの名誉を毀損するような形で、無断で使用した場合、そのタレントが法的手段に訴えるならば、勝訴の可能性は非常に高いということは言うまでもありません。

 ところが、悪質な編集者たちは、タレント側が裁判にかかる時間や経費、裁判所への出頭義務、裁判関連記事の露出等から判断して、自分の写真を無断掲載されたからといって、その都度、告訴はしないだろうと高を括っている節があります。このような考えを覆すには、タレント側が執拗に告訴を続ける以外に対抗手段はありません。 彼らは、言わば“確信犯”なのですから、正論としての肖像権論をいくらぶつけてみても、容易に態度を改める相手ではないのです。
 
[「報道の自由」と同程度に「報道被害」にも配慮すべきだ]

 困ったことに、編集者やその顧問弁護士の中には、まことしやかに無制限な「報道の自由」を主張する人が実に多いですね。ひょっとすると、彼らは、心底から、否、 あまりにも無邪気に「報道の自由」がタレントの肖像権や人権よりも優先すると信じているのかもしれません。好意に解釈すれば、だからこそ、同じコンテキストの中で 掲載された一般人の写真には目隠しを施し、タレントの写真はそのまま無断で掲載しているのかもしれません。しかし、確信犯としか考えにくい悪質な編集者に対しては、 そんな推測や配慮は全く無用です。

 釈迦に説法でしょうが「自由」とは決して「何をしても構わない」という意味ではなく、「法で許されている範囲内における随意の行為」に他なりません。したがって 「報道の自由」とは、「法的に保護された肖像権の範囲内における随意の報道」であってしかるべきです。

 節度を欠きタレントの人権を無視した報道での写真使用は、当然、「人格権的肖像権 =プライバシー権」に抵触し、時と場合によっては報道被害を生み出しかねません。 ともすれば「報道の自由」を声高に叫ぶ人に「報道被害」への意識が希薄である例を、 過去に私はたくさん見てきています。

 
   
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