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2019.6.28

相続の法制度、40年ぶりの大改正・・・相続・遺言はこう変わる

第8回 これからの相続対策

1 連載を振り返る

これまでの記事においては、「新しい制度」「制度の変更」について、果たして使えるのか、使う意味があるのかを、突っ込んで検討してきました。

それをおさらいしますと、

(1) 自筆証書遺言の様式緩和・法務局での預り(第2回)
 → 遺言は公正証書によるべきで、自筆証書遺言はお薦めしない

(2) 遺留分の制度変更(第3回)
 → 制度変更を踏まえた事前準備を綿密に行う必要あり

(3) 配偶者居住権(第4回)
 → 事前対策としての配偶者居住権の遺贈は、結果が読めないので使えない

(4) 「対抗要件主義化」(第5回)
 → 遺言による事前対策に重大な制約が加わった。他の方策も加えて事前対策の練り直しが必要

(5) 特別の寄与の制度(第6回)
 → 新しい制度では不十分。功労にむくいたいなら、生前贈与・遺贈・養子縁組等を検討すべき。

(6) 預金凍結への対処(第6回)
 → 凍結を免れる額だけでは不十分なら、生前贈与・生命保険・信託などの活用を検討すべき。

というものでした。

新しい制度が、画期的で有効なので、それを積極的に活用して事前対策を行いましょう、などという話は何もありません

ご紹介できなかった制度変更も含め、改正後の新しい法制度は、むしろこれまでの事前対策の見直しの必要性を提起するものであり、また、新しい制度だけではやはり不十分と思われる点について、しっかりと対策を講ずべき必要を改めて感じさせるものというべきです。


2 これまでの相続紛争・遺言作成等の世界
 ~ 牧歌的世界から、家庭裁判所等における相続紛争精緻化へ

私が弁護士になった約25年前においては、遺産分割調停等の世界もまだ牧歌的で、弁護士もそれほど高いスキルを要求されるようなことはあまりなく、また、相続人の方々も最後は折れ合って紛争を解決できることが多いジャンルでした。
確かに、昔も今も、骨肉の感情のぶつかり合いという解決困難な事案は確かにありましたが、それについては、法的スキルを駆使して争うというより、全力でぶつかり合って互いに疲れ切った結果、問題が終息していく、という観がありました。

しかし、その後相続法の理論はどんどん深化し、それに伴って家庭裁判所の遺産分割事件等の扱いも精緻化してきました。ある意味、必要以上にマニアックになってきたともいえます。

正直にいって、意識的に新しい理論と実務を習得しようとしてこなかった弁護士では、この種紛争を正しく扱うことができないことになっていると思われます。

その上、このたび法制度が大きく変わりました
対抗要件主義化などの油断できない制度変更があり、配偶者居住権などその価値の評価の理屈が極めて難しい制度も設けられました。

今後は、相続紛争について基本的スキルのある弁護士と、そうでない弁護士に別れていくでしょう。


3 これからの相続紛争・事前対策

(1) 遺言だけでない対策を提案できるか

このような様相が大きく変化する状況においては、遺言書を作成すればなんとかなったというこれまでの常識は通用しません
生前贈与、生命保険の活用、信託の活用などの、遺言以外の対策も検討し、最適な手段を見いだす必要があります。
更に、事業や資産の法人化、親族間であっても不動産利用権をしっかり契約化しておくなど、裾野の広い検討も必要となってきます。

(2) 税務面の検討が必須

また、相続税その他の税制との関係を見据えないと、結局誰の利益にもならなかったという場合も生じ得ます。
相続紛争・事前対策に関わる弁護士は、その種の税務に長けた税理士との密接な連携が必須となっています。

相続に関わる紛争は、これからも親族間の感情が関わるウエットな紛争であることは変わりませんが、それの対処しかしないというアナクロな事件処理は、もはや許されない段階に来ていると感じます。

(3) 挑戦する弁護士が求められる

弁護士の仕事は、これまでは、生じてしまった紛争について、一方当事者の立場に立って、有利な事実を主張し、不利な事実について対処し、争いごとの対処を請け負う、「喧嘩請負人」という性格が強いものでした。
今後もそのような性格が変わることはありませんし、法的紛争を扱える唯一の専門職である弁護士の役割はますます重要です。

この「紛争の世界を知っている」ことは、事前対策においても非常に重要なものです。

例えば家族信託のジャンルでは、現状では司法書士さん達が活発に活動しています。 私もそのような活動に真剣に取り組んでいる素晴らしい司法書士さんを多数存じ上げております。
しかし、司法書士さんは、残念ながら家庭裁判所の調停・審判事件の代理人とはなれません。簡易裁判所の民事事件での代理権はもつことができますが、司法書士さんの本領はあくまでも登記業務です。
家庭裁判所での代理権がない、その点で事前対策が破綻し、紛争に突入した場合の経験は未知の世界となりますし、そういう可能性のある案件についての事前対策にも限界があります。

税理士さんは税務の専門家で、相続税・贈与税などの仕組みや、更に事業承継税制などの複雑極まる制度については、弁護士もそれに長けた税理士さんと協働すべきです。
しかし、税理士さんは、あくまでも税務の専門家であり、相続の税務面の対策は専門であっても、親族間の争いの予想と、それに対する法的予防措置は専門外です。
相続人一同争いがなければ、相続税の申告をお願いした税理士さんに遺産分割協議書を作成してもらっても構わないでしょう(ただし、この場合の遺産分割協議書の作成は税理士業務ではなく、相続税を扱う税理士さんが大抵保有している行政書士資格に基づく文書作成となります)。
しかし紛争が起こる可能性がある案件の場合は、万一紛争に突入した場合のリスクと必要となる手続等について、税理士さんだけでなく、連携する弁護士にも相談をしておくべきです。

翻って、弁護士一般は、これまでは「喧嘩請負人」の役割に狎れ、登記や税務などを敬遠して学ぼうとしてこなかった傾向がありました。
更に、相続関係の法律実務についても、牧歌的な時代の名残りで、どんどん変化し精緻化する家庭裁判所の実務についても習得を怠ってきたきらいがありました。

これからは、登記や税務などについても果敢に学び、少なくともその方面の専門家と五分に議論ができる弁護士が求められます。

また、事前対策について、紛争の可能性とその行方を予想しながら、多様な選択肢から適切な解決を提案できなければなりません。

仮に紛争に至っても、単に一方に有利になるように喧嘩を請け負うだけでなく、解決方法によっては、WIN・WINの解決はないのか、大所高所から事案を見渡して判断する能力が求められます。これに関しては、税務等の関連制度の理解と、多様な法的選択肢を見いだす柔軟な思考が必要です。


当事務所は、これまでも、連携する優秀な隣接士業の先生方と協働しつつ、最高のパフォーマンスを追求して参りました。
今後も、ますます研鑽に励み、最高のソリューションを提供し続ける所存です。

2019.6.26

40年以上ぶりの相続法の大改正・・・相続・遺言はこう変わる

第7回 注意が必要 『施行期日』『適用区分』『経過措置』

1 法律の施行期日

法律の「施行期日」というのは、その法律が法規範として効力を発揮する日のことです。法律は、憲法の規定に従い、法律案が国会の衆参両議院で議決されたときに「成立」し、天皇の名で官報にて「公布」し、その後「施行期日」を迎えると効力を発揮することになります。
ただし、今回の相続法(民法)の改正のように、既にある法律の改正は、民法全部を定め直すわけではありません。
変更となる点を示した改正法という法律を制定することになっています。
今回の相続法改正についての改正法は、正式には「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」(平成30年法律第72号)という法律案を衆参両院で議決して成立しました。
この改正法は、実際は次のような内容になっています。

抜粋画像

「」を「」に改める。 とか  ・・条の次に次の1条を加える。
などのように、もとの法律を切り貼りするような文面の法律を定めて、これが施行されるともとの法律が書き換えられる、というやり方になっています。
この改正法による書き換えが行われるのが、「施行期日」です。


2 「適用区分」「経過措置」とは

ある時点で法律が書き換わり、新しい内容になったとしても、法律を適用するできごとに対して、はたして新法が適用になるのかどうかは、実は明白でないことがあり得ます。
今回の改正でも、例えば第3回でご説明した「遺留分制度の改正」については、令和元年7月1日に施行されますが、新法が適用になるのはどこからでしょうか。
例えば、令和元年1月1日に書かれた遺留分を侵害する遺言について、遺言者が6月1日に亡くなったが、遺留分権者はまだ侵害額請求をしていない、という場合、侵害額請求をしようとするときには法律は変わっており、減殺請求ではなく侵害額請求をすることになっていますが、新法によるのでしょうか、旧法によるのでしょうか。
このような、どちらの法律が適用になるか分かりづらい点を明らかにするのが、「適用区分」「経過措置」の規定です。
改正法には、
(民法の一部改正に伴う経過措置の原則)
第二条 この法律の施行の日(以下「施行日」という。)前に開始した相続については、この附則に特別の定めがある場合を除き、なお従前の例による。
という規定が置かれています。
「特別の定め」は見当たらないので、施行日前に開始した相続である上記の例の場合は、「なお従前の例による」=旧法が適用される、ということになります。「相続の開始」=被相続人の死亡、が、改正前であれば旧法を、改正以後であれば新法を適用することになります。
この規定は、「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」の「附則」に規定されているものです。


3 改正内容ごとの施行期日と経過措置

  • (1) 自筆証書遺言の要件緩和(第2回)附則6条
  • ・施行期日
    平成31年1月13日
  • ・経過措置
    遺言作成日基準。平成31年1月12日までに作成された遺言は旧法を適用。
  • (2) 遺留分制度の改正(第3回)附則2条
  • ・施行期日
    令和元年7月1日
  • ・経過措置
    相続開始日基準。令和元年6月30日までに死亡した被相続人については旧法適用=遺留分減殺請求
  • (3) 配偶者居住権(第4回)附則10条
  • ・施行期日
    令和2年4月1日
  • ・経過措置
    基本 相続開始日基準。令和2年3月31日までに死亡した被相続人の配偶者については配偶者居住権の制度は適用されない
    更に 配偶者居住権の遺贈は、遺言作成日基準。令和2年3月31日までに作成する遺言では、配偶者居住権の遺贈は規定できない
  • (4) 対抗要件主義化(第5回)附則3条・2条
  • ・施行期日
    令和元年7月1日
  • ・経過措置
          
    基本 相続開始日基準。令和元年6月30日までに死亡した被相続人の「相続させる遺言」については旧法が適用され、登記なくして第三者に対抗できる
    拡張 債権の遺産分割について受益相続人単独で対抗要件を備えられるようにした新899条の2第2項は、令和元年6月30日までに死亡した被相続人の遺産分割にも適用。
  • (5) 遺言執行妨害行為は善意の第三者には対抗できない(第5回)附則2条
  • ・施行期日
    令和元年7月1日
  • ・経過措置
    相続開始日基準。令和元年6月30日までに死亡した被相続人の遺言については旧法が適用され、遺言執行者があればその執行を妨害する行為は絶対無効
  • (6) 特別寄与料の請求(第6回)附則2条
  • ・施行期日
    令和元年7月1日
  • ・経過措置
    相続開始日基準。令和元年6月30日までに死亡した被相続人の遺言については旧法が適用され、特別寄与料の請求はできない
  • (7) 預貯金凍結への対処(第6回)附則5条
  • ・施行期日
    令和元年7月1日
  • ・経過措置
    遡及適用。令和元年6月30日までに死亡した被相続人の預貯金についても新法が適用され、一部払出請求ができる


4 応用クイズ

(1) 事例
Aさんは、平成30年5月1日、長男Bさんに1億円相当の自社株を生前贈与。贈与税については、事業承継税制の適用を受け猶予。
令和5年5月1日、AさんはBさんに時価1億円の自宅不動産を相続させる遺言を書く
令和9年6月1日、Aさん死亡
Aさんの相続人は長男のBさんと二男のCさん。Aさんの遺産は自宅不動産のみ

(2) Cさんの遺留分侵害額請求
CさんはAさんの遺産を何ももらえない。Bさんに遺留分侵害額請求をするが、いくらの請求ができるか?
遺留分の改正については、相続開始日基準。Aさんについての遺留分には新法が適用。Aさんの遺言の対象となる自宅不動産1億円はCさんの遺留分算定基礎になる。
Bさんへの自社株 1億円の贈与は、贈与後10年以上が経過しており、贈与時にはAさんはまだ自宅不動産1億円をもっていたから、AさんBさんがCさんの遺留分を侵害すると知っていたことはないので、遺留分算定基礎には入らない
よって、CさんはBさんに自宅不動産1億円×1/2×1/2の2500万円の遺留分侵害額請求ができる。
自社株分は、Aさんが10年を超えて生きてくれたおかげで、Bさんは遺留分侵害額請求を免れた

(3) Cさんが相続登記してDさんに処分
Cさんは、Aさんの遺言の存在を知らずに自宅不動産について相続登記の上、Dさんに2分の1の持分を4000万円で売却、移転登記Dさんも善意
遺言執行の妨害行為の無効については、相続開始日基準。新法が適用される。
Aさんの遺言に遺言執行者があっても、新法の規定により執行行為妨害無効は善意のDさんには主張できない。
Dさんは確定的に1/2の持分を取得
Bさんは、Cさんに対し、遺言執行行為妨害の無効を主張し、持分代金4000万円について不当利得返還請求
Cさんは借財の返済に2000万円を使ってしまっていた。
Bさんが返還を受けられるのは、Cさんの現存利益の2000万円のみ。

2019.6.21

40年以上ぶりの相続法の大改正・・・相続・遺言はこう変わる

第6回 その他の改正 嫁の相続権?・『預金凍結』への対処 ほか

法務省ホームページ(http://www.moj.go.jp/content/001285654.pdf)より抜粋


1 嫁の相続権? 民法の最後の条文1050条

(1) 当然ながら、「嫁」には相続権はない

Aさんには、長男Bさん、二男のCさんの2人の子がいます。妻には先立たれました。
高齢のAさんは、長男Bさん・その妻のDさんが同居して面倒を見ています。
実際には嫁のDさんがかいがいしくAさんのお世話をしていたのですが、Bさんが不慮の事故で亡くなってしまいました。
Dさんは、その後もAさんと同居して、Aさんが亡くなるまで献身的にお世話をしました。
Bさん・Dさんの夫婦は、子どもに恵まれませんでした。
Aさんが亡くなった場合、DさんはAさんの遺産を相続できるでしょうか?

答えは、Dさんは一切相続できない、です。

(2) 「代襲相続人」でもない、「寄与分」も相続人でない以上関係ない

え、Bさんの分を代わって相続できないの、と思う方もおられるかも知れません。
民法には「代襲相続人」という制度があります。BさんDさんの夫婦に、Eさんというお子さんがいたとしましょう。BさんがAさんより先に亡くなっても、Bさんが相続するはずだった分は、代わってEさんが相続します。これが「代襲相続人」(だいしゅうそうぞくにん、と読みます。)です。
しかし、この「代襲相続人」は、Aさんの子であるBさんの、これまた子であるEさんというAさんの「直系卑属」でないとなれません。DさんはBさんの相続人ですが、代襲相続はAさんとの関係を見ます。縦に繋がっている人でないとなれないのです(兄弟姉妹相続のときは、被相続人とは縦に繋がってませんが、甥姪までの一代代襲はあります)。
Bさんの子ではなく、Aさんの直系卑属でもないDさんは、代襲相続人ではなく、相続権はありません
でも介護した人に認められる「寄与分」ってなかったっけ?確かに「寄与分」という制度はありますが、この「寄与分」という制度は、法定相続人の相続分を増やす制度で、そもそも相続権のないDさんには認める余地がないのです。
「相続人がいない場合」であれば、家庭裁判所に申し立てて財産がもらえる「特別縁故者に対する財産の分与」という制度もありますが、AさんにはCさんという相続人がいるので、これも適用がありません
結局Dさんは、一切相続できず、Cさんが全ての遺産を相続することになります。

(3) 「最後の切り札」1050条
そこでこのBさんのような被相続人への貢献に報いるため、新たに「特別の寄与」という制度が設けられました。従来1044条までだった民法に配偶者居住権などの規定が加わって条文数が増えた最後の第10章・1050条がそれです。
この制度は、
被相続人に対して
①無償で
②療養看護その他の労務の提供をしたことにより
③被相続人の財産の維持または増加に「特別の寄与」をした
④被相続人の親族が
⑤相続の開始後
⑥相続人に対し
⑦「特別寄与料」の支払いを請求することができる、
というものです。
①から③については、これまでの寄与分の議論とほぼパラレルです。
寄与分についても、自宅介護の苦労に対してヘルパー代程度更にそれから削られる)しかみとめてもらえないとの批判がありましたが、この「特別の寄与」も認められる額はその程度にとどまると思われます。
④は親族であることを要件としているので、仮にDさんがBさんの内縁の妻であったような場合には認められません
⑥⑦により、相続権を取得し、遺産分割に加われるのではなく、相続人に対しお金を払ってくれと請求できる権利となっています。本例でBさんが亡くなっていなければ、相続人であるBさんも請求の対象になります。ただし、請求するかどうかはDさんの任意です。相続人が複数いるときは、法定相続分・遺言などによる指定相続分の割合で分担します。
期間制限があります。短いです。相続人との協議で定まらないときは、家庭裁判所に協議に代わる処分を請求しますが、「特別寄与者が相続の開始及び相続人を知ったときから6か月」内に請求しなければなりません。また、「相続開始のときから1年」を経過したときは請求できなくなります。


2 預金凍結の例外

(1) 相続と預金の凍結

相続が起こると亡くなった方の預金が「凍結される」=引き出せなくなる、ということは広く知られています。引出に来た方は預金者ではないですし、相続人であったとしても他に相続人がいるのかいないのかなども金融機関には分かりません。なくなった方のご葬儀や、入院していた病院の支払いに使うといっても、引出は認められないのです。
しかし、これについては、法律の世界の理屈と、銀行実務の間に食い違いがありました。
銀行からすると下手に払い出しに応じて責任を追及されるのは困るので、なくなった方の出生まで遡った全部の戸籍・除籍の謄本をとりそろえ、相続人の範囲を確認できるようにし、更に相続人全員が所定の用紙に署名して実印を捺し、印鑑証明書も添付するように求めていました。葬儀費用の支払いなどには到底間に合いません。そこで、従来は、お亡くなりになる直前に、または、亡くなっても銀行には秘密にしておいて、キャッシュカードなどで預金を引き出してしまうということが広く行われていました。これが後に相続人の間でのもめ事に繋がることも多かったのです。
一方裁判所の考えは違っており、預金=銀行に対する債権(お金を払え)という権利は、被相続人がなくなると、法定相続分の割合で当然に分割され、それぞれの相続人が自分の分の払戻が請求できる、というものでした。それでも銀行は、他の相続人からクレームが入るのがいやなので、困ると「裁判を起こしてくれ」ということも多かったのです。裁判が起こされると銀行は全く争わず、その判決をもって支払いを請求すると払う、というのが多くの場合でした(ごく最近は任意に支払う銀行も増えてきていましたが)。
ところが、平成28年12月、最高裁はこれまでの判例の扱いを180度変更し、預金は遺産分割の対象となる=当然に分割されるものではない、という考えに改めました
その結果、これまでの銀行実務どおり、相続が起こると預金は凍結され、相続人一同で遺産分割協議をするか、調停・審判で遺産分割がされないと引出ができないことになります。
しかし、それでは、葬儀費用や生前の医療費、被相続人と生計を同じくしていた相続人の生活費の支出などができず困ったことになります。
そこで改正法では、①一定の限度でそれぞれの相続人が引き出せる制度と、②家庭裁判所が判断してそれ以上に引き出せる制度を設けることにしました。

(2) 家裁の関与なしにそれぞれの相続人が単独で引き出せる権利

これは、預金の額の3分の1にその相続人の法定相続分をかけた金額(それでも1金融機関150万円を上限とする)を、他の相続人の同意がなくても単独で引き出せるとするものです。
この150万円という金額は、平均的な葬儀費用などを参考に、法務省令で定められました。
一つの金融機関に普通預金や定期預金などいろいろな預金があった場合は、払戻を請求する相続人の判断に委ねられますが、定期預金という預金は本来は満期まで払戻請求ができない(実際に満期前の払戻に応じているのは銀行のサービス)ということになっていますので注意が必要です。
また、この制度ができたといっても、払戻が請求できる「相続人」であることの証明にはなくなった方と請求者の身分関係が分かる戸籍等が必要になりますし、法定相続分の割合が分かるには、結局相続人全員についての相続関係を戸籍等で証明しなければなりませんので、これらの取り揃えの手間は相当なものです。
死亡後すぐにお金が準備できるようにするには、生命保険や、信託銀行の金銭信託商品を活用する、家族信託で家族受託者にお金を移しておくなどの対処が必要でしょう。

(3) 家裁の仮の処分での引出し
遺産分割の事件は家事調停や家事審判の事件として、家事事件手続法にのっとって行われますが、この家事事件手続法に、家庭裁判所が「事件の関係人の急迫の危険を防止するために必要があるとき」に「その他必要な保全処分」を命ずることができる、という制度があり、これを使って仮の引出しを認めた例がありました。
しかし、「事件の関係人の急迫の危険を防止するために必要があるとき」というのは随分厳しい条件ですので、今回この家事事件手続法も改正され、条件が緩和されました。
・遺産の分割の審判または調停の申立をした場合に
・相続債務の弁済、相続人の生活費の支払いその他の事情により
・払戻請求を行使する必要があるとき
に家庭裁判所が保全処分として預金の全部または一部を仮に取得させることができる、という規定が新たに設けられたのです。
ただし、他の共同相続人の利益を害することはできないとされていますので、その相続人の法定相続分割合以上に取得することは不可能と思われます。
この分は、「仮に」取得しているだけですので、後の遺産分割で精算されます。

2019.6.19

40年以上ぶりの相続法の大改正・・・相続・遺言はこう変わる

第5回 専門家もまだよく知らない 『対抗要件主義化』~とにかく登記を急げ~

 

抜粋画像

※ 公証人として多数の遺言を作成した遠藤英嗣は、今回の改正をこのように嘆いている(遠藤英嗣『全訂新しい家族信託』・日本加除出版2019.5「全訂にあたって」)。

1 「遺言書があるから安心」ではなくなった

遺言書は何のために書くのでしょうか。
相続人一同がしっかり話し合い、一同一致して適切な遺産分割ができるなら遺言書は要りません。
相続人一同が、被相続人の遺志を受け止めて行動する場合でも、相続人のほかに遺産を譲りたい方がおられるなら、その意を汲んだ相続人がその方に遺産を譲ると、贈与になって贈与税がかかりますから、遺言書は書いた方がいいでしょう。ただ、これは例外です。
遺言書を書く必要があるほとんどの場合は、被相続人の希望と、相続人の希望が食い違う場合です。
遺言を遺す方は、いろいろな思いを抱えておられます。
「この財産はこの子に継いで欲しい、そうでないと家業が途絶える」「あの子は障害を抱えて将来が心配だから遺産は極力あの子のために役立てて欲しい」「あの子は育て方を誤りいつも親を頼りにしてきた、これからは自立して欲しい」「私がいまあるのはあの方のおかげだ、あの方のご遺族にせめてこのくらいは受け取ってもらいたい」「親を困らせ私をないがしろにしてきた兄に私の財産は絶対渡したくない、それなら身寄りのない気の毒な子どもたちのために寄付したい」・・・
このような希望を叶えるために、遺言は活用されてきました。
もちろん、第3回でご説明した遺留分という最低限の取り分はあるので、それは侵せませんが、遺留分を侵害しない範囲では、被相続人の希望を最大限叶えるように運用されてきたのがこれまでの遺言に関する判例でした。
しかし、今回の法改正で、その遺言の力は、大幅に制約されることになりました。
それが、「対抗要件主義化」などの改正です。


2 自分の財産なんだから、行き先は自分で決めたい・・・がそうでもない

民法学の議論の詳細をお示しすると、膨大で切りがないので、大胆に要約します。
上記の項目の表示のような意識は、国民一般に普通に共有されていると思います。その上で、遺留分という最低限の取り分もこれは仕方ないという知識も知られており、また、もらう側の場合として、最低限遺留分はもらえるでしょうという知識も普及している。
遺言は基本的に遺言する人の自由だが、相続人の遺留分は侵害できないよ、というところで、国民意識は折り合いがついていたと感じます。
今回の法改正も、それをほりくずしているのではありません。
その点では何も変更はないのですが、主に「第三者の権利」について、これを重視する方向に大きく舵を切りました。
その結果、従来、遺言があればなんとかなった、というケースが、遺言があっても危ない、ということになったのです。


3 具体的なちがい

(1) 設例と現行法の場合
理屈から説明するより、改正前後で実際にどういう違いがあるかをまずご説明します。
首都圏近郊の旧家X家の現当主、Aさんは、妻に先立たれ、子がB・C・Dの3人います。
長男のBさんは、Aさんの父が後継ぎとして甘やかした結果、やっと入った大学も中退し、その後はX家の跡取りとして取り入る輩に担がれて、事業を興しては失敗しを繰り返してきました。そのたびにAさんが後始末をしてきたのです。
二男のCさんは、早々にX家に見切りをつけ、努力して国立医大を出て、今は医師として活躍しています。経済的にも困っておらず、実家のことはできれば関わりたくありません。
2人の兄の姿を見、Aさんを気の毒に思った三男のDさんは、地元の市役所に就職し、公務員として働くかたわら、旧家X家の当主であるAさんの働きを助けてきました。
Aさんは、自分の死後を気にかけ、かねてつきあいのある弁護士Pに相談し、次のような遺言を書きました。遺産は約30億円に上ります。
遺産は、全てX家を継ぐDに相続させる
長男Bには、その遺留分に相当する代償金を、Dが払う
遺言執行者として、弁護士Pを指定する。
また、Aさんは、Dさんが代償金を払えるように、Dさんを受取人とする保険契約をしました。
Aさん死亡後、Cさんは自分の権利の主張は行いませんでした。
現行法(法改正前)の場合です。
Aさんが亡くなり、遺族一同悲しみに沈んでいたのですが、Bさんの様子が変です。
 「オヤジは遺言かいてたのか?」「オヤジの遺産は一体どれだけあるんだ」などと、Dさんに小声で聞いてきます。Dさんは、「兄さん、まだ葬儀も終わってないんだから」とたしなめますが、どうもBさんは大変お金に困っているらしく、そわそわと落ち着きません。みかねたP弁護士が、「みっともないからやめなさい。Aさんはあなたのこともちゃんと考えてますから、四十九日までは見苦しいことはやめてください!」といいわたし、その後四十九日の場でP弁護士が遺言の内容を明らかにしました
Bさんは、自分が遺留分は受け取れることに安心し、Cさんは自分は自分で無関係だけど、弟のDさんに、X家を頼むよ、と頭を下げ、四十九日法要は無事終わりました
Dさんが全遺産を引き継ぎ、Dさんは保険金からBさんのへ5億円の代償金を払い、Bさんはそれで借財を返して一息をつきました。

(2) 改正後その1 相続した権利を売ってしまった場合
Aさんが亡くなられた3日後、新聞に掲載された訃報を見たH金融からBさんに電話が入ります。
 H「まことにご愁傷様ですが、お父さんのAさん亡くなられた?」
 B「ええ、それでいま大変で」
 H「それはそうと、今月の返済どうなってます?」
 B「いや、それは覚えてます。済みません。おちついたらきっと払いますから」
 H「いやそれはお宅の都合でしょう。うちは期日にもらわんとやってかれんのですよ。それにね、Bさん遺産もらえますの?」
 B「いや、それは私これまで散々オヤジに迷惑かけてるし・・・」
 H「でも、相続人なんだから、ちゃんともらうべきもんは、もらうべきと思いますよ。さっさとそれもらって下さいよ。」
 B「そんなこといわれても、どうしたらいいかわかりませんし。」
 H「だったら、いい人紹介しますから、聞いてみなさい。」
Bさんは、HからI司法書士の紹介を受け、相続登記を行います。駅前から他人の地所を通らないで家まで行けると言われたAさん名義のX家伝来の土地全部に、B・C・Dさんのそれぞれ3分の1の持分の登記がされました。
葬儀も終わってしばらくして、BさんのところにH金融から電話が入ります。
 H「無事3分の1の権利を確保しましたね。じゃあ、私のところに遅れてる返済、すぐにお願いしますよ。」
 B「え、そんなこと言われたって、土地に持分が入っただけで、お金なんてないし。」
 H「じゃあ、Bさんの持分を買ってくれる人をご紹介しましょうか?」
 B「それはありがたい。是非お願いします。」
その後、BさんとH金融紹介のJ不動産が話し合います。
 J「Hさんからご紹介を受けたJ不動産です。土地の持分売っていただけるということで。」
 B「ええ、でも持分なんて売れるとは知りませんでした。あ、弁護士のPってのが、オヤジは私のことは考えてくれているとかいってましたが、このことなのかな・・・」
 J「それはどうでもいいです。では、Bさんの3分の1の持分を、6億円で買い取ります。」
 B「・・・、オヤジの不動産は30億円を下らないと聞いてましたよ!だったらオレの持分は10億円じゃないですか。それを6億円って、バカにしてるのか!」
 J「冗談言ってもらっては困ります。共有持分を買うっていうのは、どれほど大変か分かっています?共有のままでは何もできないんです。弟さん方と権利を調整して解決するにも期間も費用もかかるんです。そもそもあなたは、もしかしたら30億円についての遺留分の5億円しかもらえないかも知れなかったんですよ?それより1億円も多いじゃないですか。いいですよ断ってもらっても。この場からHさんに、Bさんは売るつもりがないって電話しましょうか?」
 B「いや、待って下さい。分かりました。6億円で売ります。」
こうして、Bさんが登記した3分の1の持分はJ不動産に6億円で売却され、登記されました。H金融は、Bさんが得た代金からこれまで貸したお金2億円回収しました。
P弁護士は、四十九日の連絡をしても一切連絡を寄越さないBさんの態度に不安を覚え、登記簿を確認して愕然とします。Bさんが相続登記の上、J不動産に持分を移転登記したことを、ようやく知りました。
 P弁護士「しまった。ここまでやるとは・・・」
P弁護士は、最悪の結果を覚悟しながら、J不動産に電話します。
 P「ご存じとは思いますが、Aさんは遺言を遺しておられ、私がその遺言執行者です。Bさんのした貴社への売却は私の遺言執行を妨害しますので、無効です。」
 J「・・・弁護士さん。私はAさんの遺言があるとか、その内容とか、一切知りませんよ。Bさんがしたことが無効とか、私には関係ない。民法が改正されましたよね?当社は善意の第三者ですから、余計なことを言わないで下さい。」
その後J社から、Dさん・Cさんに対して共有物分割請求訴訟が提起されます。
Cさんは、自分の相続分をDさんに譲ってくれましたが、X家伝来の不動産を守ろうとするDさんに対し、J不動産は、Dさんが有する3分の2を15億円で買い取るという提案をします。
30億円の3分の2の20億円を15億円で売れというのがとんでもない上に、X家を守る使命を負ったDさんは、持分を売るということが考えられません。
困るBさんに、J不動産は、「では、当社の持分を10億円で買って下さい。」ともちかけます
Dさんは、本来Bさんに、遺留分相当額の5億円は払わなければなりませんでした。
また、Bさんが法定相続するなら10億円を得ていたはずです。
X家を断絶するなら、と、Dさんは、保険金以外に5億円を借り入れて、泣く泣く10億円でJ社の持分を買い取ります。
J不動産は、10億円-6億円=4億円の儲けを得ました。
一方、Dさんは、このような事態を生じさせたBさんを訴えました。本来代償金5億円しか得られないはずなのに6億円を得ているのだから、1億円をこっちによこせ、という不当利得返還請求の訴訟です。
しかし、6億円の代金を得て、H金融に2億円返済したBさんは、H金融が紹介した先物会社に残りの4億円投資し、その一切を失っていました。
その主張をうけた裁判所は、Bさんには「現存利益」がないとして、Dさんの請求を棄却します。
結局、Dさんは30億円相当の不動産を得ましたが、5億円の借金を負いました
Bさんは、一時は3分の1の持分を得ましたが、2億円の借金が消えただけで、手許には何も残っていません

(3) 改正後その2 差押の場合
Aさん死亡後、遺族はその対応に追われていました。
長男なので喪主を務めなければならないBさんの携帯電話に、H金融から電話が入ります。
 H「もしもし、今月の返済昨日でしたけど、一体どうなってるんですか!」
 B「オヤジが亡くなって、それどころではないんです。後にして下さい!」
 H「・・・えっ、お父様お亡くなりになったんですか?たしかお父様、あのAさんですよね?」
 B「だからなんなんです。葬式の準備で忙しいんだ。またにして下さい。」
・・・
 H「おい、すぐQ先生に電話!Aさん亡くなったらしいぞ!Bの金銭消費貸借契約書公正証書だったよな?先月遅れてるな?すぐ執行文取れ!」
・・・
 Q「まだ除籍は取れないね。でも調べさせたら訃報が町内会の掲示板に掲示されてたみたいだから、亡くなったのは確実だろう。差押か?
 H「もちろん!Q先生、直ちにお願いします!
・・・
しばらくたって、Bさんのところに裁判所から「競売開始決定」が送られてきました。
Aさんの遺産の不動産の、Bさんの持分について、競売にかけるというのです。
Bさんは、一体どういうことか分かりません。Dさんも寝耳に水です。H金融は、公正証書で裁判所に差押えの申立をし、Bさんが3分の1を相続したという「代位登記」もされていました
そのうち、Bさんのところに、J不動産から「競売になったみたいですけど、8億で買ってくれるならうちで持分を競落しますよ」「うちに任せてもらえば、しっかり競落してお渡ししますから」という話がひっきりなしに寄せられるようになりました。
Bさんは、DさんとP弁護士に相談し、他人と共有になるくらいならと、Dさんが保険金の5億円とその他3億円を借り入れて8億円を作り、競落後Jから持分を買い取る約束をしました。
J不動産は、他に入札するところもなく、最低売却価格の3億5000万円で競落
その代金はDさんからの代金で賄い、差額4億5000万円を利得
Bさんは3億5000万円からH社への借財2億円が支払われた残りの1億5000万円を得ますが、これは5億円代償金をもらえるはずだったからもらっていいのか、Dさんに損害を与えているのでもらえないのか、延々兄弟喧嘩が続きました。


4 改正法の「対抗要件主義」

(1) 長くなりましたが、どうも一般には知られておらず、弁護士すらよく分かっていなそうな、今後の「修羅場」をご理解いただくために、俗な作り話をさせていただきました。

(2) 上例ような「修羅場」が起こるのは
・改正法では、とにかく登記を急がないと負けるおそれがある
・なのに、DさんやP弁護士が出遅れた
ということに尽きます。
改正以前の判例では、
「Dに全てを相続させる」という遺言であれば、Bさんが遺言を知らずに3分の1登記をし、J不動産に売却しても、Hが差押えをしても、それらは無効でした。
・本事例とはちがい、E市に寄付(遺贈)するという遺言でも、遺言執行者としてP弁護士が指定されている以上は、P弁護士の遺言執行をBさんは妨害できず、売却や差押は無効でした。
しかし、改正後は、ぼやぼや登記をしないで置いておくことは許されず、Bさんが売却した場合、J不動産が実は遺言があってBさんには持分がないと知っているのであれば別ですが、知らない以上は権利を得ることができます。上例で、J不動産は、余計なことは詮索しないようにしているのはそのためです。
H金融の差押えについても、かつては遺言執行者P弁護士の遺言執行を妨害できないことの延長上で、H金融はBさんの表向き生じている3分の1の権利を差し押さえても無効でした。しかし改正法は、第三者であるH金融の権利を優先し、遺言やその内容を知っていようがいまいが、Dさんが登記する前に差し押さえればHが勝つこととしました。


5 今後の留意点

(1) 今後は、遺言があるならいち早く登記をしなければなりません。
以前は、四十九日をまって遺言書を開示し、理解を得るように説得して円満解決を目指しましたが、今後はそのような余裕はありません
もちろん、この事例のBさんのようにお金に困った人がいるのでないなら、余裕を持って話し合っても結構ですが、P弁護士としては責任問題になりかねないので、直ちに遺言執行に着手するでしょう。
ご葬儀も終わるか終わらないかのうちに、遺産についてのきな臭い話がはじまらざるをえないことになりました。

(2) この法改正に対抗し、著しく効果が制限されることとなった遺言について、てこ入れをするのに家族信託の活用は非常に効果的です。「危機管理」としての信託活用の真骨頂というべきです。
これについては、いずれ稿を改めてご説明します。
なお、この解説で示した「修羅場」は、改正法施行(令和元年7月1日)前に遺言を作っていても、お亡くなりになるのがそれ以後である以上は、一律発生することとなっています。ご注意下さい。
遺言を書いておられる方、信託銀行に預けておられる方なども、一度点検されることをお薦めします。

2019.6.14

40年以上ぶりの相続法の大改正・・・相続・遺言はこう変わる

第4回 配偶者居住権 老後の住まいの安定確保

左:法務省ホームページ(http://www.moj.go.jp/content/001143586.pdf)より抜粋
右:法務省ホームページ(http://www.moj.go.jp/content/001285654.pdf)より抜粋

1 今回の法改正の目玉「配偶者居住権」

第1回の記事に、今回の相続法改正はある最高裁の違憲判決がきっかけと書きましたが、その違憲判決は、いわゆる非嫡出子相続分差別違憲判決(最高裁判所大法廷決定平成25年9月4日)です。以前の民法では、「非嫡出子」(ひちゃくしゅつし。法律上の婚姻をしている夫婦間の子でない子。いわゆる婚外子)は、「嫡出子」の法定相続分の2分の1しか相続分がないことになっていました。これが法の下の平等を定める憲法14条に違反するとして、違憲判決がされたのです。最高裁判所の違憲判決ですから、国会は速やかに法改正し、非嫡出子も嫡出子と同じ法定相続分を持つことになりました。
これに反発したのが保守的な政治家でした。違憲とされた民法の規定は速やかに削除される改正が行われましたが、保守的政治家からは、このような方向性は伝統的な家族制度をほりくずすおそれがあるとされ、法律婚の保護を増進することを検討すべきであるという声が上がりました。その結果、法務大臣の私的諮問機関として、「相続法制検討ワーキングチーム」が発足し、平成26年1月から平成27年1月までの検討を経て、同月28日報告書がとりまとめられたのです。「配偶者居住権」は、既にこの報告書にその構想が示され、その後法務省の法制審議会での検討を経て、改正法にとりいれられました。
なお、この「配偶者居住権」の新設の法改正は、令和2年4月1日からの施行となります。
以上のいきさつは別に秘密でも何でもないのですが、なぜか弁護士にも案外知られていません。相続の問題について、弁護士にご相談される方は、その弁護士さんに今回法改正のきっかけになったのはなにか尋ねてみてはどうでしょうか。

2 「配偶者居住権」と「配偶者短期居住権」

(1) 今回の改正で設けられることになった配偶者の居住に関する権利は、「配偶者居住権」と「配偶者短期居住権」の2種類があります。「配偶者居住権」は、原則として遺産分割等のあと、配偶者が亡くなるまでの終生の権利であり、「配偶者短期居住権」は遺産分割等までの短期間のものです。
「配偶者短期居住権」に相当するような配偶者の居住の保護は、以前から判例で認められていたのですが、その内容を強化して法律制度に改められました。

(2) 画期的なのは、「配偶者居住権」の方で、法改正の論議の過程では、「配偶者長期居住権」と呼ばれていました。立法にあたって、必ずしも「長期」とは限らないということで、単に「配偶者居住権」と呼ぶことになりました。
以下、「配偶者居住権」についてのご説明をします。
なお、配偶者居住権の評価や、相続税の課税などの数字の問題の説明が長くなっていますが、複雑で大変だということをご理解いただくために敢えて書いてありますので、読み飛ばしていただいて結構です。「せっかくの制度だが、まだわからないことも多くて使いにくい」ということをご理解いただければ十分です

3 「配偶者居住権」の意味

(1)具体例
例えば、被相続人Aが、評価額5000万円の自宅不動産と、3000万円の預金を残して亡くなったとします。
Aには配偶者であるBがおりますが、AとBの間には子どもはいません。
他方、Aには以前離婚したCとの間にDという子どもが一人います。
この場合、法定相続人は、BとDの2名。
法定相続分は2分の1ずつということになります。

(2)遺産分割では
Aの遺産について、BとDで遺産分割を行わなければなりませんが、自宅不動産はBが暮らしていくのに必要です。そこでBが自宅不動産を相続することにしますが、そうすると残りの遺産は預金3000万円しかありません。
Bは既に5000万円の自宅を受けることになっているので、預金の3000万円はDが取得しますが、全体の2分の1の4000万円には1000万円足りません
Dが仕方ないと譲ってくれればよいですが、あくまでも半分を要求する場合は、BはDに1000万円の代償金を払わなければ自宅を取得できません
Bが独自にお金を持っていれば代償金を支払える場合もあるかも知れませんが、もしお金がなければ、結局Bは自宅を取得できず、住み慣れた自宅を売却して4000万円ずつお金で分けるしか仕方ないことになります。

(3)なぜそうなってしまうのか
Bとしては、住み慣れた自宅に以前どおり住みたいだけで、5000万円で売ってそのお金が欲しいわけでもないのですが、わが国では不動産は相当の価値があることが通常で、Bも高齢だったような場合、さほど長期間住むのでもないのに、高価な不動産を相続するのが、いわば相続しすぎになっている訳です。
その結果、住まいを確保できなくなったり、また、預金など暮らしに必要なお金も取得できないなどの問題が生じます。

(4)「配偶者居住権」の発想
だったら、配偶者はこれまでの住まいに住み続けられるが、所有者のように売却したりできない限定された権利だけ取得することにし、住まいに関して得た権利は所有権ほど大きくない、ということにすれば、住まいを確保できる場合も広がるし、自分の相続分にまだ余裕があれば預金なども取得できるではないか、というのが、配偶者居住権の意味合いです。 配偶者の得る権利の価値を下げ、居住継続の可能性を拡げ、他の遺産の取得可能性も生み出す、というのがこの制度のねらいです。

4 「配偶者居住権」制度の実際

(1) 以下、「配偶者居住権」について法制度化された内容について、大まかにご説明します。ただし、本稿は、「配偶者居住権」の制度が、実際にはなかなか使いづらいものであることや、他の方策との比較対象という、世間的にはあまり触れられていない点に重点を置いてご説明するつもりですので、以下はごく大まかな説明となります。

(2) 「配偶者居住権」はどういう権利か
これまで住んでいた自宅にそのまま居住し続けることができる権利です。
民法上の「使用貸借」に類似し、「通常の必要費」(固定資産税などの公租公課、マンション管理費など)は、配偶者居住権を持っている配偶者が負担しますが、税務当局や管理組合に対しては所有者が責任を負いますので、配偶者は所有権を相続した相続人に対しこれらを支払うことになります。
配偶者居住権は配偶者の一身専属の権利で、他に売却することなどはできません。配偶者以外の他人に使用収益させることも、所有者の承諾が必要です。
期間を決めることもできますが、原則は配偶者が死亡するまでの終生のもので、配偶者が死亡すると消滅します。
配偶者居住権は登記することができ、第三者に主張するためには登記をしなければ対抗できません。

(3) どういう場合に発生するか
基本的に相続人間の遺産分割協議や、家庭裁判所での遺産分割調停・遺産分割審判で配偶者に取得させることが想定されています。遺産分割協議や遺産分割調停など相続人一同が合意している場合は無論、遺産分割審判で家庭裁判所が決めることもできますが、その場合は、①相続人一同が配偶者が配偶者居住権を取得することに合意しているか、②合意がない場合は配偶者が取得を希望し、配偶者居住権の対象となる不動産の所有権を取得することになる相続人の不利益の程度を考慮してもなお配偶者の生活を維持するために特に必要がある、ことが必要です。配偶者が希望したら当然に配偶者居住権をもらえるわけではありません
被相続人が遺言を書いて、配偶者に「遺贈」することもできます。この場合の遺言は、「相続させる」という遺言ではダメで、必ず「遺贈する」という遺言にしなければなりません。

(4) 「配偶者居住権」は、一体いくらなんだ?
遺産分割するには、配偶者が取得する配偶者居住権を金銭評価しないと、配偶者居住権の制約を受けるその不動産の所有権の評価も定まりませんし、他の遺産も含めた遺産分割を検討することも難しくなります。
配偶者居住権は、その不動産に住むことができる権利ですから、正確には次のように価値を評価すべきとされています。

ア 厳密な評価方法
建物に住める権利ですから、これを経済的に評価するなら、賃貸で借りた場合の賃料を参考にします。そこから配偶者が負担する通常の必要費を差し引いて、想定存続期間の額を出し、中間利息を控除します。
具体的に計算してみると、次のようになります。
賃料が月額20万円と想定される都内のマンションで、年間の固定資産税・都市計画税が25万円、管理費月額が3万円、配偶者が女性70歳だとすると、平均余命は平成29年の簡易生命表で20.03年です。
1年分で20万円×12か月−税金25万円−管理費3万円×12か月=179万円
これに20.03年をかけると、35,853,700円となりますが、中間利息を控除しなければなりません。
民事法定利率の中間利息控除については、令和2年4月の配偶者居住権制度開始時は債権法改正により民事法定利率は3%になることになっており、利率3%で20.03年の年金現価係数は14.8938336ですので、
179万円×14.8938336=26,659,962円
というのが配偶者居住権の評価額となります。
仮にこのマンションの時価が5,000万円で、他に預金が3,000万円あったとすると、上記の配偶者Bと前婚の子Dが相続人という場合、
配偶者Bは、配偶者居住権26,659,962円・預金13,340,038円(4,000万円から配偶者居住権分を引いた残り)、
前婚の子Dは、配偶者居住権の負担付マンションの所有権23,340,038円(5,000万円-配偶者居住権評価額)・預金16,659,962円(3,000万円から配偶者が得る預金取得分を引いた残り)を取得する、
という遺産分割となるわけです。
このようにして、配偶者はこれまでの住まいに住み続けながら、他に預金の分割も受けられることになります。

イ 簡易な評価方法
このような計算は必ずしも簡単ではないので、相続人間で合意ができる場合であれば、次のような簡易な評価方法をとることも提唱されています。
それは、その不動産物件の耐用年数のうち、配偶者居住権の負担を負わない期間がどのくらいあるかを検討し、物件価格のうちその期間相当分を所有権価格とし、物件価格からそれを差し引いた残りが配偶者居住権の価格だ、と考える方法です。
これも、具体例で見てみましょう。
上記の例に、更に次の条件を加えてみます。
そのマンションは鉄筋コンクリート造、築15年を経過しているとします。
鉄筋コンクリート造の住宅用建物の法定耐用年数は47年、残りは32年です。
そのうち、配偶者居住権の制約を受ける期間は配偶者Bの年齢での平均余命、約20年。制約のない期間は約12年です。
このマンションの固定資産税評価額が建物1,000万円、土地の敷地権割合分が2,200万円だとすると、配偶者居住権の負担を負った建物所有権の価格は、配偶者居住権消滅後の期間分として、
 1,000万円×12年÷32年=3,750,000円
と計算されますが、20年後にならないとそれを得ることができないのですから、20年分の中間利息を減価します。
債権法改正後の3%の利率での複利計算のライプニッツ係数は20年の場合0.55367575なので、それを掛けると2,076,284円となり、
配偶者居住権のうちの建物価格は
 1,000万円-2,076,284円=7,923,716円
と計算されます。
土地に関する権利は減価していかないので、所有者は20年後に2,200万円の土地を手に入れると考えると、上記のライプニッツ係数をかけて12,180,867円。
2,200万円-12,180,867円=9,819,134円が配偶者居住権のための土地利用権の価格になり、配偶者居住権と合わせると配偶者が取得した権利は17,742,849円となります。
前婚の子Dが取得する所有権価格は、14,257,151円ということになります。
ここに預金3,000万円も勘案すると、遺産全体は3,200万円+3,000万円の合計6,200万円、B・Dそれぞれの相続分が3,100万円ですから、
 Bは配偶者居住権17,742,849円と預金13,257,151円、
 Dは所有権14,257,151円と預金16,742,849円
取得することとなります。
アの計算とは数字が違ってきており、また、物件価格を固定資産税評価額とするのも実勢価格とは違いがありますので、このような簡易な計算方法によるのはあくまでも相続人の間で合意がある場合に限られ、この方法は一種の目安というものです。

(5) 相続税ではどのように扱われるのか
配偶者居住権は、無償でその物件に居住できる権利ですから、相続税の課税対象となるべき性質があるものです。
しかし、譲渡することはできませんので、時価は観念できません。
よって、相続税においては、一定の算定方法を定める必要があり、平成31年度の法改正で相続税法に明文の規定が置かれました。
その考え方は、概ね(4)のイの簡易な評価方法に類似します。耐用年数は法定耐用年数を1.5倍することとされています。
この1.5倍は、税法の世界では、自用の場合は減価償却費を計算する法定耐用年数を1.5倍して適用することとされているためです。
建物価格は固定資産税評価額、土地価格は路線価等によります。
上例では、建物価格は1,000万円、土地の路線価は仮に固定資産税評価の8/7倍の2,514万円だとしましょう。
耐用年数は、47年×1.5=70.5年です。相続税法では6か月単位で切捨繰り上げすることになったので、71年です。築15年ですので、残り56年ということになります。配偶者居住権の存続期間もまるめて20年と扱います。
配偶者居住権の負担を負う建物の所有権価格は、
 1,000万円×(56年−20年)÷56年=6,428,571円
に20年の3%のライプニッツ係数0.55367575を掛けると、
 6,428,571円×0.55367575=3,559,344円
配偶者居住権の建物価格は、
 1,000万円−3,559,344円=6,440,656円
となります。
土地については、所有者が完全所有権を20年後に取得すると考えて、2,514万円に上記のライプニッツ係数をかけると、13,919,408円。
2,514万円からこれを引いた11,220,592円が配偶者居住権に附帯する土地利用権の評価となります。
合計すると、
 Dの取得分が、17,478,752円
 Bの取得分が、17,661,248円
と計算されます。
なお、この計算においては、小規模宅地の特例は適用しておりません。

(6) 簡易な計算方法と耐用年数
法制審議会において簡易な計算方法が提唱された際の記録やその後公刊された文献を見ると、相続税におけるような法定耐用年数を1.5倍する処理は行われていないようです。
しかし、法定耐用年数は所得計算をする際の減価償却のためのものですので、実際の耐用年数はそれより長いと考える自用の場合の税法評価には相応の理由があると思われます。
今後、相続税課税上の評価ではなく、相続人間の遺産分割における簡易な算定方法についても、同様に法定耐用年数より長い期間を計算の基礎とする考え方が論議の対象となる可能性もあると思われます。

5 「配偶者居住権」の限界

(1) 事前対策として活用する場合の決定的限界
配偶者の居住を確保し、他の遺産からも分割を受けられるように事前に備えるには、被相続人が遺言を書いて、配偶者に配偶者居住権を遺贈することが考えられます。
不動産の比率が多く、他の遺産が少ない場合などには、このような備えをすることは十分意味があると思われます。
ただし、配偶者居住権を遺贈する遺言を書く際には、被相続人が一体いつ亡くなるのか(物件の残存耐用年数が不明)、配偶者の余命が何年なのか(相続開始時の配偶者の年齢が不確定)が全くわからないという問題があります。
遺贈しないよりしておいたほうがまし、ということは十分有り得ますが、ある程度でも数字を見通すこと自体も、不可能なのです。 また、平均余命という算定基礎が、現実には適合しないケースも多々あるでしょう。配偶者が病弱なら、平均余命までは生きられないかも知れません。そのような場合に、平均余命より短い期間を指定した配偶者居住権を遺贈することも考えられますが、案に相違してそれ以上長命であった場合などは、配偶者の死亡前に配偶者居住権が消滅してしまいます。

(2) 譲渡できない権利
また、配偶者居住権は、譲渡できないとされていることにも注意が必要です。
終生の居住権といっても、現代では多くの場合死亡するまで自宅で過ごせることは稀です。人生の最後の時期は、介護施設で過ごすことがむしろ通常になっています。
その場合、自宅が配偶者の所有物件であれば、配偶者自身や、成年後見人などがそれを売却換金して、介護施設の入居費用に充てることもできます。
しかし、配偶者居住権は譲渡することができません。
現金化して活用することができないのです。
このような問題については、物件の所有権を相続した相続人との間で、配偶者は居住権を放棄し、それに見合う金銭を払ってもらうということで、譲渡したのと類似の処理を行うことが提唱されていますが、あくまでも物件の所有権を相続した相続人が応じてくれなければ不可能ですし、この場合に、物件の所有権を相続した相続人の側に、配偶者居住権放棄による物件価値増加額分が贈与されたとして贈与税が、配偶者は見返りに提供を受けた金銭が贈与されたとして、これにも贈与税が課税され、全体として二重に贈与税を負担することになるのではないかという指摘もあります。
配偶者居住権の制度の発想は間違いではないですが、高齢者の老境の生活状況の変化を見過ごしていると言わざるを得ません。

(3) 結局遺産分割の最後の手段なのか
このように考えると、配偶者居住権の制度は十分意味はあると思われるものの、事前対策としては誠に使いにくいものになっています。
結局、遺産分割事件の最後の切り札として、配偶者の窮境を救う最後の手段として使う以上には、一般的に活用できるケースがどの程度あるのか、慎重な検討が必要と思われます。

6 「配偶者居住権」を使った節税?

(1) 最近の動き
配偶者居住権の制度ができ、ちまたで密かに拡散しつつあるのは、配偶者居住権を使った「節税」です。
これは、①配偶者の死亡によって配偶者居住権が消滅すると、物件所有者は反射的に利益を得る状況にあるが、その反射的利益が転がり込むことについて、課税の仕組みがない、ということと、②配偶者が死亡配偶者の相続に際し配偶者居住権を得る遺産分割をしても、配偶者の税額特例でほとんど課税されない、という2点の制度に着目したスキームです。
配偶者居住権という処理が必要なのは、残存配偶者の利益と、その他相続人の利益が一致しない場合なのですが、この「節税スキーム」においては、残存配偶者も、その他相続人も、利害は対立していないケースがむしろ前提になっています。配偶者とその配偶者の子である被相続人の子、という普通は利益対立のないケースでも、相続税負担を軽減するために、敢えて配偶者居住権を「活用」するという場合が想定されているのです。

(2) 本当に「節税」となるのか?
被相続人Aの相続人が配偶者のB(女性・60歳)と子Cの2名だったとします。
遺産が築15年の木造戸建(土地路線価評価で4500万円、建物固定資産税評価1500万円)と預金4000万円。
Bに終生の配偶者居住権を取得させ、預金はCが取得するとします。
60歳女性の平均余命は28.97年≒29年。
住宅用木造建物の耐用年数は22年で、これを1.5倍すると33年。15年経過しているので、残り18年。
・建物の所有権部分 18年-29年=-11年となるので、評価ゼロ
・建物の配偶者居住権部分は 1500万円−0円=1500万円
・土地の所有権部分 4,500万円に3%29年のライプニッツ係数0.42434636をかけて19,095,586円
・土地の配偶者居住権部分4500万円−19,095,586円=25,904,414円
 →小規模居住用宅地の特例を適用して5,180,883円
課税対象の合計は、1500万円+19,095,586円+5,180,883円+4,000万円=79,276,469円。
基礎控除4200万円を差し引いた37,276,469円を法定相続分で分けて18,638,234円ずつ。
税額は一人18,638,234円×15%−50万円=2,295,735円。二人で4,591,470円。
配偶者Bには、4,591,470円×20,180,883円÷79,276,469円=1,168,820円 → 配偶者の税額特例でゼロ。
子Cの税額は、4,591,470円×59,095,586円÷79,276,469円=3,422,650円
Aの相続に際し、相続税は3,422,650円となります。
その後Bが死亡して配偶者居住権が消滅しても、Cには課税がないので、2回合計の税額も3,422,650円となります。

Aの相続時に、Bに配偶者居住権でなく、土地建物の所有権を取得させると、
・B取得建物 1,500万円
・B取得土地 4500万円→小規模宅地の特例で900万円
・C取得預金 4,000万円
の合計6,400万円についての相続税の額は、
 6,400万円−基礎控除4,200万円=2,200万円
  2,200万円÷2=1,100万円
 1,100万円×15%−50万円=115万円
 115万円×2=230万円
 B分 230万円÷6,400万円×2,400万円=862,500円 → 配偶者の税額特例で0円
 C分 230万円÷6,400万円×4,000万円=1,437,500円
B死亡時には
・建物は減価してゼロと仮定しても
・土地は減価せず、Cは小規模宅地の特例を使えないと4,500万円のまま。
基礎控除3,600万円を引いて、900万円についてCに90万円の相続税が課税されます。
2回合計で2,337,500円の相続税です。

なんと、残念ながら節税にはなりませんでした。
A死亡時の相続で、Cにも所有権価格を割り付けた結果、この分の税負担増が響いています。B死亡時には確かに課税がありますが、基礎控除があるので、さほどの税額になりませんでした。実際には、A死亡時の相続で預金4,000万円全部をCが取得するのではなく、配偶者の税額特例の枠を活用して税負担を減らすことも行われるでしょう。その場合は、節税となることもあろうかと思います。

このように、「節税」となるかどうかは、ケースバイケースと言えます。配偶者居住権に係る土地価格が相当高額になる=配偶者居住権の存続期間が長期になるような場合でないと、「節税」の効果は限定的になるでしょう。配偶者Bに割り振る預金の額やB死亡時の予想残存額なども見据えた試算は、なかなか難しそうです。

なお、配偶者居住権消滅時に課税がないという状態を課税当局が見逃すのかどうかわかりません。来年の配偶者居住権制度開始前に法改正がされる可能性もありますが、一部でこのような「節税策」が取り沙汰されているようです。

7 他の手段 〜 家族信託の場合

(1) 配偶者居住権については、上述のとおり、まだまだ不明な点があります。また、譲渡できず、配偶者の生活状況の変化に柔軟に対応できないという問題もあります。
仮に税務上の抜け穴にも手が打たれた場合は、事前の対策として予測困難な問題を孕む配偶者居住権を使うべきでしょうか。 ここで、家族信託を使った事前対策が再浮上してきます。

(2) 配偶者の居住を確保する家族信託の仕組み
上例の被相続人A・配偶者B・前婚の子Dというような場合に、配偶者Bの居住を確保するのに使われてきたのは、配偶者Bに物件に居住できるという受益権を付与する家族信託です。
Aは、物件の所有権を受託者Xに移転し、A存命中は物件からの受益権はAが保有し、A死亡後は、Bに物件に居住できる受益権を与え、B死亡後に信託を終了させて残余財産はDに帰属させるというやり方です。
この家族信託には、仮にBが自宅居住が難しくなり、施設入居に費用が必要な際にはXにおいて物件を処分して、その代金をBの施設入居に充当するという権限を与えることもできます。
Dが将来得る財産は目減りしますが、Bの生活保障上やむを得ないでしょう。
家族信託は、相続税の関係では全く有利な点はなく、このような信託を作った場合は、A死亡時にBが不動産自体を相続したとみなして課税があり、B死亡時にBからDに遺贈があったとして不動産自体を基準とする相続税の課税がされます。
しかし、上述のように、信託であれば、物件を処分する必要が生じた場合にも対応ができます。配偶者居住権を設定し、Bによるその放棄と、Dによる金銭の支払いを行った場合は、ダブルで贈与税課税のリスクがありますし、Bに移転した金銭の残額を再度Dに取り戻せる保証もありません
もしかしたら節税ができるかもということで、配偶者居住権を活用する必要性がないのに、安易にこれを使うようなことは、いろいろな危険を孕みます。この点ご注意下さい。

2019.6.12


第3回 大きく変わる「遺留分」 減殺請求から侵害額請求へ
40年以上ぶりの相続法の大改正・・・相続・遺言はこう変わる

抜粋画像

法務省ホームページ(http://www.moj.go.jp/content/001285654.pdf)より抜粋

1 「遺留分」とは
遺留分(いりゅうぶん)とは、「相続人のための最低限の取り分」です。
たとえば、Aさんには、相続人として長男のBさんと、長女のCさんの2人のお子さんがいるとして、Aさんが、「私の全財産をBに相続させる」という遺言を書いたとしましょう。
この遺言のとおりで決まりということになると、Cさんは何も相続できません。
それではあまりにひどいので、Cさんにも一定範囲の取り分を認める、これが遺留分です。
遺留分は、被相続人の財産の2分の1とされています(直系尊属=親・祖父祖母などのみが相続人となる場合は3分の1)。これを法定相続分で分けたものがそれぞれの相続人の遺留分です。
上例では、Cさんの遺留分は法定相続分1/2の半分、1/4ということになります。
遺留分は、全ての相続人に認められている訳ではありません。兄弟姉妹・甥姪には遺留分は認められていません。

遺留分が認められるのはAさんが亡くなったときに持っていた財産(相続財産)についてだけではありません。
Aさんが亡くなる直前にBさんに財産の90%を生前贈与したとします。遺言は書きませんでした。
亡くなったときに残っていた10%については、Bさんには「特別受益」があるので取り分はなく、全部Cさんに相続されますが、それでもBさんが90%、Cさんは10%ということになりますので、あまりに不公平です。
そこで、遺留分については、一定範囲の生前贈与も対象とすることにして、Cさんが25%を受け取れるように、BさんからCさんに不足の15%を移すことになっています。

遺留分という制度は、戦前の家制度の時代においては、戸主が家産を他に贈与してしまった場合、これを家産を相続する次の戸主(「長子単独相続」)が一定範囲で取り戻す、という機能を果たしていましたが、戦後は家制度が解体され、「諸子均分相続」と言われる、長幼男女の差別のない平等な相続制度となった段階では、遺言を使って長子単独相続復活をもくろむのを防止する機能を担っています。
個人の財産処分の自由を重視して、遺留分の制度のない国(英米など)もありますが、フランス法の系譜に属するわが国においては、遺留分は相続法の「公序」とされ、これを侵害することは厳しく禁じられています。
最近、家族信託を使って遺留分を免れる「奇策」を提唱する人がおりますが、完全な間違いです。平成30年9月12日、東京地方裁判所で、信託を使った相続対策にも遺留分制度の適用があることを明言し、更に遺留分を侵害する目的の信託契約が公序良俗違反とされて一部無効とされる判決が下されております。


2 「遺留分減殺請求」から「遺留分侵害額請求」へ

⑴ 従来の制度「遺留分減殺請求」

ア 「減殺請求」の方法
今回の法改正前の遺留分の制度においては、遺留分を保護するやり方は、「減殺請求」(げんさいせいきゅう)を行う、ということにされていました。
上記のAさんが「私の全財産をBに相続させる」という遺言を書いたという例でいえば、遺留分の権利を持つ相続人(遺留分権者)であるCさんが、遺留分を侵害している人(遺留分侵害者)であるBさんに対し、「遺留分を減殺します」という宣言をする、ことによって実行します。実務的には、Bさんに内容証明郵便を出すことが通常です。
Cさんが、自ら自分の権利を実行することを宣言しなければなりません。自動的に保証されるものではないのです。
この「減殺請求」には期間制限もあり、1年内に行わなければなりません。

イ 「減殺請求」の効果
Cさんが「遺留分減殺請求権」を行使すると、Bさんが遺言でAさんから相続した全ての相続財産のそれぞれに、Cさんの持分が4分の1発生します。これを「物権的効果」といいます。また、不動産は面倒だから預金にまとめて遺留分を取りたい、などの選択は許されません。
遺留分減殺請求を行ったあとに、この共有関係をどう解決して行くかという、Bさんのみならず、Cさんにとっても頭の痛い問題が残っているというのがこれまでの制度でした。話し合いで解決できない場合は、共有物分割請求訴訟という民事裁判で解決するほかなかったのです。

⑵ 「遺留分侵害額請求」=金銭債権化

ア 従来の制度の問題点
上述のように、遺留分減殺請求を行っても相続財産のそれぞれに共有持分が発生するだけで、まずはその持分の確認と登記名義の移転の裁判をやった上で、現実に財産を分けるには、話し合いで解決するか、共有物分割請求訴訟という民事裁判を行うことが必要でした。
また、実際の遺留分の侵害割合の計算は、上例のように単純ではなく、Aさんに債務があったり、Cさんも生前贈与を受けていたりする場合は、計算が複雑になり、十数桁の数値の分数になったりすることもあります。そのような共有持分が登記されている不動産は、市場で敬遠されるような問題もありました。

イ 改正法の解決
改正法は、遺留分権者が持つ権利は、全てお金の請求権に切り替えることにしました。
「遺留分減殺請求」を改め、「遺留分侵害額請求」としたのです。
この「請求」というのも、「減殺請求」の場合は、遺留分侵害割合に相当する物権を取り戻すための意思表示、というだけで、その「請求」に対しお金が支払われるわけではなかったのですが、改正法では、金銭の支払請求ということになり、「遺留分侵害額を払え」と主張して権利を確定し、それを払ってもらう、という制度になりました。
むろん、遺留分侵害者が進んで支払わなかったり、財産の評価でもめて支払額が定まらないなどの場合は、やはり裁判で決着をつける必要がありますが、「お金を払え」という裁判を1回やるだけでよいので、以前の、減殺請求→持分権確認等の裁判→共有物分割の裁判、というふうに2回の裁判が余儀なくされていたのに比べると、格段に手続が簡単になりました。


3 注意点

⑴ 期間制限 1年 「消滅時効」
「減殺請求」の時代にも、相続が開始したこと(被相続人がなくなったこと)、遺留分が侵害されたことを知ったときから1年内に「減殺請求」を行わなければなりませんでした。
しかし、「減殺請求」は、「物権的効果」を生じさせるので、遺産を構成する各財産の上に生じた共有持分については、1年内に共有物分割などをする必要もなく、遺留分侵害者が不動産を他に譲渡し、登記してしまったなどのことがない以上は、その後いつでも権利を主張することができました。1年内に内容証明郵便で遺留分減殺の意思表示を送っておけば足りたのです。
改正法では、お金の支払い請求ですので、行使しないでいると通常時効にかかるべきものです。その期間は、改正法は改正前どおり1年という期間を採用しました。

⑵ 期間制限 10年 「除斥期間」
「除斥期間」というのは、事情を知っていようがいまいが、その期間の経過で権利を消滅させる、というものです。「時効」の場合は、権利があることが分かっているのに行使しないので権利を消滅させるというものですから、遺留分侵害額請求の場合は、相続が開始したこと(被相続人がなくなったこと)、遺留分が侵害されたことを知っていなければ権利を消滅させるのは酷です。
しかし、事情を知らないからといって、いつまでも権利行使の可能性があるというのは世の中の安定を害するので、事情を知らなくても、一定の期間が経過したことで権利を消滅させるというのが「除斥期間」です。遺留分侵害額請求については、相続開始の時(被相続人死亡の時)から10年間で消滅することになりました。

⑶ 「期限の許与」
改正法における遺留分権利者の権利は、遺留分侵害額請求という金銭請求権にされたのですが、遺留分侵害者の側で、その支払いに充てる金銭がないということもあり得ます。
法改正の論議の過程では、そういう場合は金銭ではなく以前のように持分をもらってもらうようにする制度も検討されましたが、複雑に過ぎるとして採用されませんでした。
しかし、現実にお金を払おうにもそれがないということはあり得ます。
そのような場合には、裁判所が「期限の許与」ということをできるように法改正がされました。
ただし、どのような状況で、どのような期限の許与がされるのかは、全く不明です。
安全のためには、生命保険を活用するなどして遺留分侵害額請求への支払い資金を準備したり、どうしても資金手当ができないなら、遺言で遺留分相当の持分を相続させることとして、敢えて共有にするような方策も検討すべきでしょう。また、この検討においては、信託を活用して高度な解決をすることもあり得ます。


4 遺留分計算に入れられる相続人への贈与についての変更

⑴ 目立ちませんが、実際上は大きな改正です。

⑵ 相続人への贈与も10年で遺留分対象外へ
従来は、贈与は原則相続開始前1年内にしたものに限り遺留分の計算に算入することとされていましたが、判例で、相続人に対する贈与は、「特別受益」に該当する贈与であれば、この1年間の期間制限はかからないとされていました。「特別受益」とは、「生計の資本としての贈与」など=要は、遺産の先取りといえるものであり、相当額の贈与は大抵これに該当、というものを指します。
その結果、遺留分の争いにおいては、長男だけは大学に行かせてもらった、二女だけは豪華な結婚式を挙げてもらった、などの随分以前の問題が蒸し返され、積年のこじれた感情が問題解決を妨げることも多かったのです。
改正法は、遺留分に関係する贈与は原則1年以内とする点は変更せず、新たに相続人に対する贈与は、これの「1年内」を「10年内」と読み替えることとしました。一見相続人に対する贈与について遺留分に関係する部分を拡げたようにも思えますが、実際はその逆で、相続人に対する贈与は「特別受益」に該当しても10年以上前のものは取り上げない、ということになったのです。これは従来の実務と比べると、大きな変更です。
ただし、10年以上前の贈与でも、贈与した被相続人とこれを受けた相続人の双方が、遺留分を侵害することを知っていた場合には、遺留分の計算に繰り入れられます。

⑶ 相続人への贈与は「特別受益」に限定
また、改正法は、相続人に対する贈与については、遺留分に関係するのは「特別受益」に該当するものに限ることに明文で改めました。この点は、従来法律の条文には書いてありませんでしたが、解釈としては同様に考えられていたものです。

⑷ 実務上の意味
この変更は、実務上は大きな意味を持ちます。
実際上生前贈与が大きな意味を持つケースとして、事業経営者の後継者への事業承継の場合があります。
中小企業経営者が持つその企業の株式は、企業の業績・状況次第で大きな財産価値を認められることがありますが、後継者に事業を引き継いでいく必要上、それを他人に売却することは基本的に考えられません。お金に換えて遺産分割することができないのです。
また、事業後継者以外の相続人にも株式を相続させることは、会社の支配権の分散を招き、事業運営上の支障にもなりかねません。
このような事業承継の問題に対処するために、経営者から後継者への株式の生前贈与が広く行われています。
この贈与について、他の相続人の理解も得られる場合は、所定の手続を経た上で、遺留分の計算上の評価額を固定したり、遺留分の計算には入れない合意をして、家庭裁判所の許可を得、相続の際の紛争を予防する手続が、中小企業経営承継円滑化法という法律で定められており、それを利用して更にその株式に係る贈与税・相続税を猶予したり免除したりする税制の特例(事業承継税制)も定められているのですが、あくまでも相続人全員の「合意」が前提です。
前提となる中小企業経営承継円滑化法の手続が複雑な上に、なかなか全員の「合意」ができなかったために、この制度はあまり活用されていませんでした。
ところが、改正法では、事業経営者が、後継者への株式の贈与の後、10年以内に死亡しなければ、他の相続人は、後継者が高額の株式の贈与を受けているとして、遺留分侵害額請求をすることはできなくなります(遺留分の侵害となることを経営者も後継者も知っていた場合を除く)。
今後は、「合意」がなくてもそれ以外の所要の手続を済ませた上で株式を生前贈与し、事業承継税制の恩恵に与ろうとすることも増えるのではないでしょうか。経営者がいつ亡くなるにより一か八かというところもありますが、いずれ遺留分を主張される見込みがあるのであれば、10年以内には死亡しないことに賭けることには十分意味があるでしょう。


5 遺留分を請求する側は忙しくなる

⑴ 遺留分減殺から遺留分減殺額請求に変わっても、遺留分権者に保証される遺留分には基本的に大きな変更はなく(ただし、上記の10年以前の贈与の点は除く)、減殺請求による物権的効果より、金銭の支払い請求になったことで、遺留分を請求する側には有利になったようにも思われます。

⑵ しかし、遺留分侵害を受けた相続人には、遺産に関する情報や、生前処分についての情報がないことがほとんどです。
そのような場合、相続人の地位で被相続人の生前の銀行取引履歴などは入手できますが、そこから生前贈与を受けたのは誰なのかを解明できるとは限りません。
現金引き出しとなっていれば、その現金を誰に贈与したのかは、銀行の履歴からだけはわからないのです。

⑶ そのような状況下で、1年内という期間の中で、誰にどのような生前贈与がされたのか、その額はいくらかを解明するのは簡単ではありません。
むろん、改正前でも、この問題は存在していましたが、とにかく減殺請求をすれば権利が保全されたので、資料から思い当たる先にはとにかく遺留分減殺の意思表示をして=内容証明郵便を送りつけておいて、その後に時間をかけて検討し、あるいは先方と交渉しながら生前贈与の実情を解明し、真に遺留分を侵害しているのはどの贈与なのか、それとも遺贈なのかを解明することは可能でした。
しかし、改正法下の遺留分侵害額請求は、1年内に訴訟を提起しないと時効で消滅してしまいます。これまでは、手当たり次第に内容証明郵便を出し、結果的に遺留分を侵害していなかった先についてはそれは無意味だったで済みましたが、今後は遺留分侵害額請求の訴訟を、思いつく限りの相続人等を被告として提起し、その訴訟上で侵害していなかった被告に対する訴訟を取り下げていくというような方法しか思い当たりません。
侵害していないのに被告とされた相続人との間柄は、気まずいことになってしまうでしょう。


6 資料解析には高度のテクニックを要する

⑴ ところで、相続に関する紛争においては、生前の銀行預金口座の異動について情報を入手し、それを解析することが必須です。
一時被相続人生前の預金口座の異動については、各相続人単独での開示を求められないという判例が示されましたが、それはその後改められました。
ですから、現在は、各金融機関が記録を残している概ね10年前までの情報は入手は可能です。

⑵ しかしそれを入手しても、適切な解釈ができなければ全く役に立ちません。
A銀行の定期預金1,000万円が解約されている!と浮き足だっても、それが程なくしてB銀行に入金されていれば、単純な口座間の移動とみるべきでしょう。
そのような、複数の口座間の移動を丹念に除外し、真実問題のある被相続人資産の流出を指摘するには、高度な熟練が必要とされます。
当事務所はこの種の技術が必要とされる案件を多数担当し、経験を蓄積し、それぞれの案件で現実に成果を上げてきました。
無論、この種の解析のみで結果が得られるものでもなく、訴訟上の他の争点についても綿密な論証があってこその成果ですが、「数字は嘘をつかない」「不自然な数字の背景には何か真実が隠されている」という「目」、これは大変重要です。
これは、弁護士のみでは達成できません。優秀な秘書陣を擁し、その努力をもってはじめて可能です。この秘書陣の能力は形式的事務処理能力ではなく、現実に即した柔軟な発想こそが重要となります。
それ単独では問題とされない毎月の定例的支出の不自然な増大、これまであった支出項目の消滅、現金引出についての不審点・・・これらを発見し、そこから真実を見いだすのは、優秀かつ世情に通じた秘書の解析と、それを総括する弁護士の協働作業です。

当事務所は、これまでこのような「目」を鍛えることに専心してまいりました。これからもその「目」をますます研ぎ澄ます所存です。

2019.6.7

40年以上ぶりの相続法の大改正・・・相続・遺言はこう変わる

第2回 自筆の遺言が書きやすくなった  が、自筆証書遺言を使うのか

(登記事項証明書を目録として使用した自筆証書遺言の例。法制審部会参考資料より)


1 自筆証書遺言の要件緩和

遺言(法律の世界では、「ゆいごん」ではなく「いごん」と読みます)には、公証役場で公証人に作ってもらう「公正証書遺言」、遺言をする人が自分で手書きする「自筆証書遺言」と、ほとんど活用されていない「秘密証書遺言」の3つのやり方があります。
このうち、自分で手書きをする「自筆証書遺言」は、気軽に作成できる点がメリットですが、全文を手書きしなければならず、これが大変でした。
特に、遺産のリスト(目録)などは、項目が多くなることもままあり、それも含めて全部を手で書くというのは、非常に大変なことです。
書き間違いをした場合の訂正の方法も法律に厳しい決まりがあり、それに従わないと無効となるおそれがあり、公正証書遺言が年間10万件以上作成されているのに対し、自筆証書遺言が多くを占めると思われる家庭裁判所での「検認」の件数は年間2万件にも満たないものでした。

改正法は、全ての手書きを要求する点を改め、相続財産の目録については、手書きでなくてもよいことに改めました。
今回の法改正のうち、この自筆証書遺言の要件緩和は、既に平成31年1月13日から施行されています。

2 目録の作成方法

改正法は、「相続財産の目録」については「自書することを要しない」と定めました。
従来、「全文手書きですよ、ワープロ・パソコンはダメですよ」と言われていた目録が、手書きでなくてよいことになった、というと、じゃあワープロやパソコンで作らないとならないのか、自分はワープロやパソコンは使えないし・・・と心配する方がおられますが、それは取り越し苦労です。手書きでなければならない、を改め、手書きでなくてよい、としただけですから、手書きでない目録を一から自分で作れ、といっているのではないのです。
不動産なら登記事項証明書(登記簿謄本)やそのコピー、銀行預金なら口座が特定できる通帳のコピー、株などの有価証券であれば、証券会社からの報告書など、既にある書類を活用してこれを目録として使うことができるようになったのです(冒頭の画像は登記事項証明書を使った例)。
ただし、これらの書類をただ添付するだけでは、誰かが差し替えてしまっても分かりません。そこで、改正法では、「目録の毎葉に署名(手書きで氏名を書くこと)し、押印しなければならない」として、遺言書を作った人が、確かにその書類を目録として使ったことが分かるようにすることを求めています。

3 注意点

細かい点ですが、次のような注意点が指摘されています。

⑴  「添付」~手書きの遺言書の裏に印刷してはダメ
目録は手書きの遺言書の本体に「添付」するものとされているので、物理的に別の紙でなければなりません。手書きの遺言書の裏に印刷したり、通帳のコピーをとった紙の裏に手書きで遺言を書いても無効な遺言になってしまいます。
ただし、本体と目録をホチキスで綴じたり、契印(割印)をすることまでは求められていません。

⑵  「毎葉」とは
手書きでない目録が紙の片面にしかない場合 → その面に署名押印する以外に、何も書かれていない裏に署名押印することも可能(毎「葉」なので、裏であっても手書きでないその用紙に署名押印はしてあるから)
手書きでない目録が紙の両面にある場合 → 裏表それぞれに署名押印が必要(法律にその旨規定されています。こうしないと署名押印のない面が書き足されたかどうか分からないから。)

⑶  印は実印でなければならないか
これについては、以前から遺言書の作成に使用する印は、実印であることは要求されておりませんでした。改正法でも同じです。なお、指印(拇印)については、押印と認められていますが、戦国武将や大名のような「花押」(名前を凝ったデザインにした手書きの紋章)を使う人もいますが、これは「押印」とは認めないのが最高裁の判例です。

4 法務局での預かり制度も導入される

⑴  民法の改正では、このとおり自筆証書遺言の相続財産の目録について、自書を要しないこととされ、自筆証書遺言の活用の機会が増したのですが、実務的にはそれ以上に大きな制度改正が、法務局における自筆証書遺言の預かり制度の創設です。

⑵ 特別の法律ができた
昨年7月の民法等の改正とセットで、「法務局における遺言書の保管等に関する法律」という特別の法律が制定されました。この法律の施行は令和2年7月10日で、まだ施行されていません。
新しい制度のために、現在準備作業が行われているところであり、関連の法務省令もまだ制定公布されていません。

⑶ 制度の概要
所定の様式(これについての法務省令案もまだ未公表)に従って作成した自筆証書遺言を、本人が「遺言書保管所」とされた法務局に持参し、所定の申請書を提出、手数料を納めて保管してもらいます。
法務局では、預かっている遺言に関するデータを電子情報で管理し、必要な場合に速やかに見つけられるようにするほか、遺言書自体のイメージデータも保管し、必要な場合に「遺言書情報証明書」を発行します。

⑷ 検認が不要になった
この制度で法務局に預かられた自筆証書遺言については、家庭裁判所の「検認」が不要となります
実務上はこの点が最大のメリットというべきです。
自筆証書遺言については、従来から家庭裁判所の「検認」を受けなければならないこととされています。
「検認」は、遺言書の保管者が家庭裁判所に申立を行い、法定相続人一同が裁判所に呼び出され(欠席するのは自由)、その「検認期日」に遺言書を提出し、封がされていたら裁判官が開封し、遺言書の体裁・内容を公の記録に残す手続です。

遺言書によって、不動産を相続した相続人が自分名義への登記を行うにも、遺言書があるというだけでは登記申請は受け付けられません。必ず家庭裁判所の検認を受け、「検認済証明書」という裁判所の証明書を添付してもらってはじめて登記申請が受け付けられます。銀行預金の払い戻しや名義変更なども、全てこの検認と検認済証明書が必要になります。

この検認期日は、申し立ててから短くても最低1か月程度後にしか入りません。

また、遺言があるということは、法定相続と違う相続をしたいわけですから、法定相続人には遺言により不利益を受ける人が含まれています。
そのような人も一律に呼出を受け、家庭裁判所に来てみたら自分は損をするだけだったという場合には、怒り出す人もいます。

このように「検認」は、決して愉快な手続ではありません。これまではこのような問題を避けるために、自筆証書遺言は避け、検認の要らない公正証書遺言で遺言をされることをお勧めしてきたのですが、この自筆証書の法務局での預かり制度を活用すれば、「検認」による遺言実現のタイムラグや、不満を持つ相続人とのトラブルを避けることができます。

検認が不要とされた自筆証書遺言による登記申請などには、法務局の発行する「遺言書情報証明書」を使用することになります。

⑸ 対抗要件主義化と検認不要のメリット
本連載の第5回(6月19日)でご説明する予定ですが、今回の相続法改正では、法定相続分以上に遺産を取得した相続人は、速やかに登記をしないと遺言書どおりの遺産が受け取れない可能性が生ずることになりました。
法務局の預かり制度を利用しない自筆証書遺言では、検認期日まで動きが取れませんので、この危険はますます増大します。
自筆証書遺言による場合は、この預かり制度を是非活用すべきです。

5 それでは、自筆証書遺言の活用を薦めるか

新しい制度ができる訳ですから、それを活用しようという人は確実に増えるでしょう。公証人の中には、公正証書遺言の依頼が減少することを危機感をもって捉えている方もおられます。
しかし、当事務所においては、「危機管理」の観点から、ご相談者に対し積極的に自筆証書遺言をお薦めすることはまったく考えておりません

それは、自筆証書遺言の要件が緩和され、法務局の預かり制度が整備されても、まだ公正証書遺言の方がすぐれている次のような点があるからです。
① 無効を争われにくい
公正証書遺言は、専門職の公務員である公証人(多くは元裁判官・検察官です)の面前で、遺言をする人が遺言の内容を「口授」(口頭で述べる)ことで作成するものとされ、また、利害関係のない「証人」2名(自ら準備できないときは、公証役場が1人の日当5000円から1万円程度で、専門士業の人やその他信用できる団体の人などを準備してくれます。)も遺言書作成に立ち会います。
遺言をするには、遺言の内容を分かった上で意思を表明することが必要ですが、この「遺言能力」が実はなかったという争いは、しばしば見受けられます。公正証書遺言についてすら争われ、無効との判断が下された事例はありますが、それでも公証人が関わった遺言が無効となるというのは、めったなことではありません。
法務局での預かり制度においても、本人の出頭を求めるなど他人のなりすましを防ぐ仕組みは作られていますが、本人が出頭してきたところで、その人に遺言能力があるかないか不安を覚えても、申請自体をする能力がないと判断せざるをえない場合を除き、法務局は一切関知しないと思われます。
この点で、公正証書遺言は、基本的に遺言能力があることが確認されて初めて作成できるものであって、この差異は無視できないところです。
② 遺言執行着手が最速
公正証書遺言により相続登記の申請などを行う場合、必要なのは作成されている遺言公正証書の正本又は謄本と、遺言した人が死亡したことを証明する書類(除籍謄本がスタンダードです)、住民票の除票です。
法務局預かりの自筆証書遺言で登記申請をする場合、上述の遺言書情報証明書の発行を受けなければなりませんが、これが発行されるのは、遺言をした人の死後に限られます。そしてその発行を求める場合は、相続人全員を確定するための戸籍謄本や、その住所を示す住民票等の提出が求められることとなる予定です(法務省令がまだ制定されていませんが、遺言書保管法9条5項で法務局から相続人等への通知を義務づけており、遺言書情報証明書の発行を申請した者にこれらを提出させることとなると思われます。)。このような書類の取り揃えに、相当の時間を要することが予想されます。
公正証書遺言の場合は、遺言書作成時から既に正本・謄本ができていますから、相続人全員の戸籍等は要りません。遺言者が死亡したことと、登記の印紙代の関係で、相続人であることが分かる限度での戸籍等があれば足ります。

遺言の作成というのは、案外大変なものです。
関係者がお亡くなりになる順序が予想と異なった場合、適切な相続を実現できるかなどを、いろいろ場合分けして予想することは、なかなか大変です。
今ある財産が、その後も相続になるまでずっとそのままあるかどうかも分かりません。認知症になり施設に入居するため、裁判所が選任した成年後見人が自宅不動産を売却換金するかも知れません。長男には自宅不動産を相続させ、その他の財産は長女に、などと考えて遺言書を書いて、結果的に悲惨な結果になってしまうこともあり得ます。
成年後見関係の業務も多数手がけている当事務所では、当然このような予想を立て、検討は行っていますが、要後見状態についての見通しをもってアドバイスできる専門家は、実はまだ多くありません
遺言によるのがよいのか、生前贈与がよいか、信託を活用した方がよいか、相続税の負担はどのように予想されるかなどの検討などは、自筆で遺言を書こうという方が自分でできるレベルを超えています
そもそも、問題点・リスクを感じること自体が、なかなかできないことです。

当事務所は、信頼できる弁護士に、任意後見などの備えも含めて広く相談し、多面的な検討を受けていただくことをお薦めします。
公証役場では、ある程度のアドバイスはしてもらえますが、遺言の内容に立ち入った積極的なアドバイスは、公証人の役目を超えるものです。

当事務所も、緊急事態については、公正証書遺言作成までのつなぎとして、自筆証書遺言作成をしていただくこともあります。ごく最近もそのような例がありました。自筆で書くことが困難な場合は、自書が不要な死因贈与契約書にするという裏技もあります。自筆でないので、ご本人の意思によっているという作成状況をビデオ撮影して、争いようのない記録に残すなどの手段を取って、万全を期しています。

しかし、時間がある場合は、じっくり検討し、更に公証人の目も入れて、遺漏なきを期するのが当事務所のスタンスです。

公正証書遺言は、確かにいくらかは費用はかかりますが、さほど多額というものでもありません。それを厭うて自筆証書遺言を選択し結局争いごとになるリスクの方が、はるかに大きなものです。
このような考えから、当事務所では、遺言を作成する場合は、公正証書遺言によることとしております。
自筆証書遺言の要件緩和や預かり制度は、これを活用せざるを得ない状況の場合は活用するにやぶさかではありません。本人出頭などが無理なら、死因贈与契約書等にシフトして対処します。しかし、時間がある場合は、公証人の費用などの当然の必要経費は覚悟していただいて、公正証書遺言を作成することにさせていただきます。

これこそが、皆様の「危機管理」のために、是非必要と思うが故です。

2019.6.3

相続の法制度、40年ぶりの大改正・・・相続・遺言はこう変わる

第1回 相続法制の大改変と対処の必要性

週刊現代 6月8日号 表紙

これは「週刊現代」の6月8日号(5月27日発売)の表紙です。

民法の相続に関する制度が、国会で実に40年ぶりに大改正されたのは、昨年7月13日。
モリ・カケ国会の停滞で、もう改正は無理なのではと思われていたところで、国会会期末、ほとんど審議されないまま成立してしまいました。
この、去年の法改正は、一部は今年1月13日に既に施行され、多くの重要な改正が来たる7月1日に施行されます。

相続については、戦後の「家制度」の廃止に伴う大改正以来、それほど大きな改正がされないで来ました。昭和55年には、配偶者(妻・夫)の法定相続分(遺産についての法律上の取り分)が3分の1から2分の1に増やす改正が行われましたが、その後は実質的な法改正はされていませんでした。

戦後の家制度解体に伴う法制度の改正にもかかわらず、国民意識の中で根強く続いていた「長男優先」などの意識が、その後どんどん薄れ、日本人一般に権利意識が強くなってきた状況でした。世間での相続問題に対する考え方は激変し、戦前の制度に、戦後の法改正を被せた制度のあり方に、いろいろな限界が生じていたのです。

そのような状況の下で、ある最高裁の違憲判決をきっかけに、主に配偶者の保護を主眼とする法改正が自民党から提起され、それについての検討の上に、従来からの法解釈の限界を法改正で実現するという動きも合流し、昨年の法改正に至りました。

多くの重要な改正は、まさに今年7月1日から施行されます。

これに向けて、昨年来多くの書籍や解説記事が公表されております。

しかし、法改正として実現されたものを真っ向から批判するようなことは、いささかやりにくいのでしょうか。
「キレイ」な解説が目につきます。

そうはいっても、相続問題に直面する方々や、それに関わる弁護士などには、油断できない重要な法改正も多々されております。

この連載では、改正法の問題点からも目を逸らさず、改正内容自体が果たして適切であったのかという点までも含め、その問題点にいかように対処すべきかも考えた、現実的に必要とされるご説明をしようと思います。

改正法の本格施行の、今年7月1日までに、6月の毎週2回、合計8回で、集中的に解説記事を掲載する予定です。

お読みいただけた方には、是非ご感想・ご質問をお寄せいただき、それを反映した記事にしていきたいと思います。

現在の掲載予定は、次のとおりです。

① 6月5日水曜日 この記事
② 6月7日金曜日 「自筆の遺言が書きやすくなった・・・が使うべきか?」
③ 6月12日水曜日 「大きく変わる『遺留分』」
④ 6月14日金曜日 「『配偶者居住権』 老後の住まいの安定確保」
⑤ 6月19日水曜日 「専門家もまだよく知らない 『対抗要件主義化』~とにかく登記を急げ~」
⑥ 6月21日金曜日 「その他の改正 嫁の相続権?・『預金凍結』への対処」
⑦ 6月26日水曜日 「注意が必要 『施行期日』『適用区分』」
⑧ 6月29日金曜日 「これからの相続対策」

以上の連載においては、相続・遺言などの制度について、改正点が関連する基本的な仕組みにもふれることで、改正の前提となる相続の制度の仕組み自体もご理解いただけるように工夫いたします。

その上で、改正法の考え方や仕組みの問題点についても、一般には明言を避けられている点にも言及し、現実的にどういう対処が必要かについてもご理解いただけるようにしたいと思います。

当事務所は、「危機管理のプロフェッショナル」をモットーとしております。

あいまいな法制度への理解や、甘い見通しで、結果的に実現できない不適切な相続対策を見過ごすようなことは、許されるものと考えておりません。

今回の法改正には、これまでの実務のやり方を激変させるような「おそろしさ」が含まれています。この問題点は、これまで遺言による備えの多くの部分を担ってきた信託銀行においても、まだ十分意識されているとは感じられません。

改正法の、すぐれた点、活用できる点については積極的に活用しつつ、下手に活用しようとすることで問題が生ずるような点については、慎重な吟味をして思わぬ陥穽に陥らないようにすること。

これを、「危機管理のプロフェッショナル」とのモットーに恥じないよう、実現してまいります。

31.01.23

伊東が『月刊弁護士ドットコム』40号(2019年1月)に弁護士が知っておきたい『民事信託』とその実務として、「信託と遺留分の関係」を執筆しました。

本年7月から、民法の遺留分の制度が変わります。
これまでは、法定相続人の最低限の取り分である「遺留分」について、「減殺」の意思表示がされると、全ての遺産の上に遺留分の侵害の割合に応じた持分が発生するという「物権的効果」が生まれることとされていました。
今回の改正で、遺留分については、減殺→物権的効果、という仕組みはやめることになり、「遺留分侵害額請求」という、金銭請求ができるにとどまることになります。

生前の遺言代用の信託契約や、遺言による信託について、遺留分が問題となることについては、学説は一致して認めていましたが、誰に対し、何について減殺を主張するのかについては、信託財産説と受益権説の対立があり、まだ一致を見ていませんでした。本稿は、この両説と今回の遺留分の制度改正の関係を、実務的観点から論じたものです。

ぜひご一読下さい。
詳細はこちら

信託と遺留分の関係

31.01.15

東京弁護士会研修センターにて、民事信託の講演をしました。平成30年度第4回専門講座「民事信託の基礎と実務」のPART4「民事信託に関わる周辺知識(民事信託に関わる租税、登記、金融機関の対応)」です。民事信託を実務に活用していく場合、信託法の観念的な議論より、税務面、不動産の登記のノウハウ、金融機関との折衝などの実務知識が欠かせません。それらについて、かけあしですが、ご紹介させていただきました。(伊東大祐)

民事信託の基礎と実務

30.11.14

村上重俊弁護士がフェイスブックに「ヒアリングシートを活用した 遺言書作成 聴取事項のチェックポイント」(編著・新日本法規2018.7)を紹介したところ、多くの方から反響がありました。
ご参考までに、この書籍の目次とヒアリングシートの一例を当事務所オフィシャルブログに掲載しましたのでご参照下さい。
当事務所ブログ:http://blog.livedoor.jp/murakami_partners

30.11.09

伊東が所属する一般社団法人民事信託活用支援機構において、弁護士が知っておきたい『民事信託』とその実務を連載します。
第1回は、今年7月に約40年ぶりに大改正が行われた、相続法の改正について伊東が執筆しました。
自筆証書遺言の財産目録が手書きでなくてもよくなる改正が平成31年1月13日から施行され、その他の改正も平成33年7月までに順次施行されます。
配偶者居住権の創設、遺留分制度の大変更など大きな改正だけでなく、法定相続分と異なる遺言相続には登記が必要となるなど、遺言執行等で注意が必要な改正も多々されております。
顔写真がなぜか黄緑になっておりますが、ご容赦下さい。
詳細はこちら

信託フォーラム

30.10.16

当事務所で獲得した裁判例が、判例雑誌に掲載されました。
事件の舞台は、同族会社です。一部の株主が死亡し、その株主の株式について誰も議決権を行使できないのをいいことに、その娘で同社唯一の取締役が、会社の預金の実に99.5%に当たる8300万円を退職慰労金として受領しました。当事務所は、他の株主の代理人としてこれに異議を唱えたところ、裁判所は、会社法に違反する違法な退職慰労金支給であるとして取り消しました(最高裁で確定)。
ところが支配株主側も考えました。娘の弁護士が仕立てた協力者に娘の株式を譲渡し、協力者の名前を使って共有物分割という手続を用いて多数派工作をし、これによって取り消された退職慰労金支給をあくまで実現しようと企みました。
裁判所は、形式上は合法の共有物分割請求であっても、違法な退職慰労金支給の手段として行われる場合には訴権の濫用として却下すべきであるとして、娘側の共有物分割請求を却下しました。
詳細は、当事務所ウェブサイトに掲載の判決文をご覧ください。
詳細はこちら

信託フォーラム

30.10.16

日本加除出版の『信託フォーラム』第10号に「信託契約書の欠陥と作成に関与した者の責任」を執筆しました。
最近の安易な契約書作成に警鐘を鳴らす内容となっております。(伊東)

信託フォーラム

30.9.5

伊東が執筆に加わった、『パッとわかる 家族信託コンパクトブック』(第一法規・2,800円+税)が出版されました。
日弁連信託センターの仲間である、戸田智彦弁護士・伊庭潔弁護士のほか、「信託大好きおばちゃん」として高名な菅野真美税理士が税務面からの検討を加えた、家族信託について他に類を見ない内容となっております。(弁護士伊東大祐)
第一法規

家族信託コンパクトブック

30.8.1

今年の暑中見舞いのテーマは、地熱発電です。
日本は、火山列島に位置し、原発に不向きな世界有数の地震国ですが、同時に有数の地熱資源国でもあります。
原発再稼働には1基数千億円を要すると算定され、安全を重視する地元の反対で再稼働には長期間を要すると予測されております。政府は、自前の資産である地熱発電の開発に資金を投与すべきではないでしょうか。

ハガキ

30.7.18

「疑問だらけの森友事件不起訴処分」をブログに掲載中です。

30.7.6

遺言書の作成について 「ヒアリングシートを活用した 遺言書作成 聴取事項のチェックポイント」 を出版しました(編著)。新日本法規・定価2500円+税です。ご入用の方はご連絡下さい(弁護士伊東大祐)

新日本法規出版
Amazon

ヒアリングシートを活用した 遺言書作成 聴取事項のチェックポイント



30.6.22

東京芝ロータリークラブの2018年5月16日例会の「卓話」にて,私が専門とする「家族信託」についてお話をさせていただきました。(弁護士伊東大祐)

29.11.30

ホームページをリニューアルしました。

29.10.30

「知って得する法律上の豆知識」を更新しました。

知って得する法律上の豆知識はブログ連載中です。

29.10.19

「知って得する法律上の豆知識」の掲載を始めました。

■知って得する法律上の豆知識 その1

29.6

事務所体制の刷新ならびに名称変更のお知らせ

28.9.5

原発事故の損害賠償事件で画期的な賠償額を獲得
私が、原告代理人として提訴した工場用地の損害賠償請求事件で、本年9月2日東電との間で勝訴的和解が成立しました。
賠償額が東電の算定を大幅に上回った初めてのケースで、賠償金には弁護士費用や遅延損害金も含まれています(遅延損害金の4年分は既に回収済みなので和解金には含まれていません。)。
これまで低い賠償額で仕方なく承諾した被害者が多数おられますが、まだ未解決の被害者にとっては良い先例になると思います。
なお、この事件は、当日NHKでニュースとして放映され、各報道機関も記事として取り上げました。

■東京電力との勝訴的和解について
■訴状
■答弁書
■地図
■原発事故賠償訴訟 NHK NEWS WEB
■読売新聞(H28.9.3)
■毎日新聞(H28.9.2)
■時事通信(H28.9.2)
■朝日新聞(H28.9.3)
■日本経済新聞(H28.9.3)

28.5.31

原発訴訟で勝訴判決を獲得!

 ■勝訴判決
 ■プレスリリース
 ■東京地裁 判決(H28.5.30)
 ■NHKニュース(動画)
 ■時事通信
 ■読売新聞(H28.5.30)
 ■読売新聞(H28.5.31)
 ■朝日新聞
 ■日本経済新聞

27.1.14

伊東先生の分析に全面的に賛成しています。

■経済学者 伊東光晴 先生 「戦後の自由」を諦めない

与良政談に共感しました。

■熱血!与良政談 反「反知性主義」

 

26.4.9

福島原発が当初から致命的な欠陥を隠蔽しており、今も重大な危険を抱えているというドイツの報道「フクシマのうそ」(日本語訳)のユーチューブを知りました。
信頼度の高い内容です。是非ご覧下さい。

■フクシマのうそ

 

26.1.7

昨年末に、ロイター通信から、原発事故による損害賠償請求訴訟について、取材を受けました。
ロイター通信の配信記事を当事務所のホームページにアップしましたので、よろしければご覧ください。

■焦点:政府・東電が封印する株主・貸し手責任、しわ寄せは福島・新潟に

 

24.5.17

先日河野太郎衆議院議員の原発問題に関する講演を聞きました。
大変示唆に富んだ内容でしたので、当事務所のホームページにアップしました。

■河野太郎衆議院議員の講演 

 

24.5.11

先日放映された村上弁護士が取材を受けた成年後見問題のドキュメンタリー番組をユーチューブにアップしましたので、よろしければご覧ください。

■動画

 

24.4.26

村上弁護士が取材を受けた成年後見問題のドキュメンタリー番組が、5月2日(水)26:10~27:10(3日2:10~3:10)フジテレビで放映されます。

■テレビ放映のお知らせ

先日の講演が東京芝ロータリークラブの週報に掲載されました。前回のダイジェスト版です。

■東京芝ロータリークラブ週報

24.4.12

~福島原発の損害賠償請求に取り組んでおります~
3月21日、ある会合で「原発損害賠償の現場で」という題名で講演をしました。

■原発損害賠償の現場で

20.12.9

広末涼子 ㈱小学館に勝訴(H20.12.9)

■東京高裁 判決
■プレスリリース(控訴審判決を受けてのコメント)

20.11.4

閲覧謄写申請不許可処分取消請求事件最高裁でも勝訴
公正取引委員会に対し、審判記録の全面開示を命じた1審、2審判決確定。

■最高裁 上告不受理決定について(函館新聞社のコメント)

20.10.15

パブリシティ権訴訟 最高裁でも勝訴(H20.10.15)

 ■「上告棄却決定」(雑誌社側の上告棄却、高裁判決確定)
 ■最高裁決定についてのコメント「コアマガジン社発行『ブブカスペシャル7』に関する最高裁決定について」

パブリシティ権訴訟で逆転勝訴
(東京高等裁判所 平成 16 年(ネ)第 4076 号)

たくさんのタレントの肖像を無断使用して、不当な利益を得た雑誌社に対し、パブリシティ権に基づく損害賠償が初めて認められました。

■「控訴審判決要旨」

◇インターネット上ニュース及び新聞等各紙で報道されました◇
社団法人 芝法人会会員誌「The Shiba⑧2007」(村上弁護士 インタビュー記事)
「(株)函館新聞社(当方) 対 (株)北海道新聞社」
 ⇒ 2006 年 10 月 24 日 2 億 2000 万円で和解成立
(東京地方裁判所 平成14年(ワ)第8915号 損害賠償請求事件)
~商事法務No.1782  2006/11/15 P56に判例掲載~

■「商事法務」

函館新聞社の新規参入妨害をめぐる損害賠償請求訴訟で和解が成立
北海道新聞社に和解金 2 億 2000 万円の支払義務

◇ 2006 年 10 月 25 日 朝日新聞・毎日新聞・日本経済新聞・読売新聞・産経新聞等新聞各紙に掲載されました。

■「今日までの経緯」

▼「(株)函館新聞社(当方) 対 公正取引委員会」閲覧謄写申請不許可処分取消請求事件
 H20.11.4 最高裁でも勝訴
 公正取引委員会に対し、審判記録の全面開示を命じた1審、2審判決確定。

■最高裁 上告不受理決定について(函館新聞社のコメント)

1審: 2006 年 2 月 24 日 朝日新聞・毎日新聞・日本経済新聞等各紙に掲載されました。

■「第一審判決」
■「第一審記者会見資料」

2審: 2006 年 9 月 28 日 毎日新聞・日本経済新聞等各紙に掲載されました。

■「第二審判決」
■「第二審記者会見資料」

  平成の大改正 新『会社法』誕生
(社団法人 芝法人会 会報誌『The Shiba』連載記事)

・『有限会社がなくなる!?』
・『叔父さんが亡くなったらその株は?』